白尾さん達の恋模様【BL】 (ページ39)

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好きな所 nk→kn ページ39

なかむside

目の前の人は、恋をしている。
...俺の好きな人は、俺の知らない人に、恋をしている。
いつも笑顔で、優しい彼は、クラスのとある女子に恋をしているらしい。
恋をする表情は、とても綺麗だった。
そして最悪な事に、俺はその表情に、恋に落ちたのだ。
片想いをする、儚げな顔が、少し寂しそうなその顔が、酷く綺麗で。
その顔を初めて見た時、胸がどくりと、大きく音を立てた。

＿可能性なんてものは０%で、実るにはあまりに遠すぎるその恋は、どれだけ俺を苦しめただろうか。
今日だってほら、またあの人を見つめてる。
俺の視線にも気づかないで、ずっと。
それでも、その顔が好きだと思ってしまうのだから、皮肉なものだ。

「なかむ！今日、3回目が合った！！」

嬉しそうに笑みを浮かべて、そんな事を伝えられたって、俺はただ苦しいだけなのに。
それでも、君が好きだとは言えないから、「良かったね、」って、作り笑いを浮かべて伝えてるんだ。

気づけば彼の視線はあの人に行く。
さっきまで俺を見ていたあの青い瞳は、名前しか知らない誰かに向けられる。
その事実が、どれだけ辛くて、苦しくて、痛いのか、彼にはきっと分からないだろう。
さっさと告白して、実ってしまえ。
そうすれば、きっとこの思いも忘れられるから。
この苦しみから、早く、解放させて。

「俺さ、今日告白しようと思う。」

いつも以上に真剣な顔で、彼はふとそう呟いた。
喉から出かかった、’’止めて’’なんて言葉は直ぐに飲み込んで、「頑張ってね。」なんて。
胸の痛みを抑えながら、いつも以上に引き攣った笑顔で、彼を応援した。
成功して欲しいけど、して欲しくない。
そんな矛盾した気持ちは、きっと彼を好いた理由の所為だ。
久しぶりに1人で帰る放課後は、やけに静かで、2人でいつも歩いていた歩道は、俺が1人で歩くには、広すぎて。
大して悲しくもない筈なのに、目頭が熱くなるのを感じた。