escape kr→nk ページ37
なかむside
※狂愛系
清々しい青空。
程よく暖かい風。
その風に、揺られて動く木々の音を聴きながら、俺はご機嫌に廊下を歩いた。
「〜♪〜♪」
静かな廊下に、俺の足音と鼻歌が響く。
「おはようございます。朝食を届けに...。って、あれ...？」
いつものように、患者棟の病室の前でそう言ったが、気配が全く感じられない。
嘘だ、まさか、
考えられる最悪の事態に、焦りを感じつつ、俺は急いで2階に向かった。
まさか、彼も？
嘘でしょ？
急いでマスターキーで病室を開けた。
＿そこには、いるはずの彼はいなかった。
「う、そ...。なんで...。」
俺が出張してる間に逃げた？
でも、この病院には、監視カメラも、きりやんもいるのに...。
なんで？
なんで、なんでなんでなんでなんで！？
「おはよう、なかむ。どした？」
後ろから聞こえた声。
「きりやん...。」
「ん？」
「みんな、居ないの。なんで？きんときが居ないの。わざわざ隔離して、逃げる確率を1番減らしたのに。...なんで？」
「逃げたからね。昨日の夜の内に。」
「なんで、止めなかったの？！」
なんで、なんでよ。
せっかく閉じ込めて、俺だけの物にしようと思ってたのに。
流石に1人は可哀想だから、みんなも連れてきてあげて。
脱出の計画立ててたのだって知ってたけど、それでも楽しそうに、考えてたからいいかなって思ってたのに。
恐怖に歪む顔も、急いで脱出しようと考えてた顔も、みんなと話す時の安心しきった顔も、全部、全部が愛おしくて、だから、閉じ込めておきたかったのに。
どれだけ計画を立てようが出られる事なんてないから、きりやんに託して、出張に行ったのに。
まさか、きりやんに裏切られるなんて思ってなかった。
「俺にとって、あいつらはどうでもよかったからね。」
ぽつりと、そんな言葉を呟かれた。
「...は？」
意味が分からない。
どうでもいい...？
馬鹿じゃないの？
きんときこそが、全てで、彼の笑顔が、俺の生きる意味なのに...？
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作者名：ローゼ | 作成日時：2019年4月14日 22時
