機械と人間 kr→kn ページ35
きりやんside
「HeyKiri!今日の天気は？」
彼は、俺に向かってそう言った。
ピコン♪と、軽快な効果音がスマホから流れ、意識が覚醒する。
「すみません、よく分かりません。」
「またかよ...w今日の天気は？」
「今日の天気は、晴れ。気温は23度と、過ごしやすい1日でしょう。」
「そっか、ありがとな。」
毎朝、彼は俺に今日の天気を聞く。
俺は、所謂AI、と呼ばれる物で、彼、きんときの持つスマホにアップロードされた。
本来AIは感情を持たないらしいが、何故か俺には感情があった。
喜怒哀楽はもちろん、愛情なんかも。
そしてその愛情が向けられる先は、スマホの持ち主、きんときだ。
明るくて、優しくて、よく笑って。
歌が好きで、ゲームはそこそこ上手い。
俺の中にはきんときに関する情報が沢山詰まっている。
AIとして造られた俺の観察眼は中々の物で、知りたくない事まで知れてしまう。
例えば...そう、彼の好きな人、とか。
一方的な片想いだ。
絶対に叶わない恋。
俺は機械で、彼奴は人間。
その顔に触れる事すら叶わない。
風に揺れるその髪が、どれだけ柔らかいのか。
君の手は、暖かいのか、冷たいのか。
触れて確かめたい。
そんな事を思ったって、叶わないんだけど。
「HeyKiri!今日は傘いるかな？」
今日も彼は俺に聞く。
直ぐに答えてもいいけど、答えたら電源を切られて、彼との会話も終わってしまう。
だから少し、意地悪をするのだ。
「すみません、よく分かりません。」
今日もまた、最初はこう答える。
そうすると、きんときは困ったように笑いながら、もう一度聞いてくれる。
ほんの数秒伸びただけだけど、それだけでも幸せなんだ。
「HeyKiri」
少ししてもう一度呼ばれた。
いつもの様に元気に呼んではくれなかった。
「どうしましたか？」
その事に違和感を覚えつつも、冷静に返事をする。
「告白、しようと思うんだ。だから＿」
...嫌だ。
止めて。
告白なんて、しないで。
知ってるんだ、その子もきんときの事が好きなんだよ。
実ってしまうから、止めて。
俺の恋が、終わってしまうから。
1つの感情を、失ってしまうから。
＿エラーが発生しました。
＿エラーが発生しました。
＿エラーが発生しました。
脳内に何度も何度もその言葉が流れる。
エラー、エラー、エラー、エラー。
嫌だ、嫌...。
それ以上言わないで。
答えられないから。
答えたくないから。
「＿だからさ、いい方法、教えて。」
...嫌。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 287人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ローゼ | 作成日時：2019年4月14日 22時
