とある上司の物語 01-04 ** ページ5
体の奥深くまで強制的に抉じ開けられる感覚が、堪らない。
根元まで受け入れると、内臓という内臓がざわざわと震えだすような心地がした。
突き抜ける衝動は紛れもない歓喜だ。顎を反らし、吐息をこぼす。
「宮園さん、平気?」
夜のように甘い声が意識を引き戻す。
額に指が触れた。
汗で湿った前髪を撫で、柔らかくもない肌を滑る。
そのまま優しい仕草で閉じた瞼をノックされて、宮園はようやく目を開いた。
『あぁ……?』
生理的な涙で滲んだ視界の中に、男の姿が映りこむ。
『誰だ……?』
「ちょっと。それはさすがに、ひどい」
吐息がかかるほどの距離まで顔を近づけられて初めて、相手が同じ特務課に所属する斐之嵜一誠だということに気がついた。
『お前か、』
と呻いた唇に唇が重なり、濡れた舌が粘膜を擦る。
『んっ……』
咥内に広がる甘酸っぱい風味には心当たりがあった。
ジャムだ。
それもイチゴの安いジャム
――連動するように、喫煙室で斐之嵜に遭遇した記憶が蘇る。
緩慢な仕草でジャムパンを食べるその仕草に無性にムラムラして、少し遅めの休憩に誘い出したのは宮園のほうだった。
霞がかっていた記憶が繋がると、焦点も次第に合ってくる。
世界の輪郭が明確になって、吹き出すように色づいた。
その中心で、黒曜石のような輝きを持つ艶やかな瞳が柔らかく緩む。
「思い出した?」
『あぁ、』
頷くと、頭の下でスプリングが軋んだ。
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作者名:茄恋 | 作成日時:2017年12月21日 0時