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視点なし
“急だけど、今日は部活なしや”
バレーボールのグループLINEに、キャップテンである北信介からLINEが来た。
そして宮侑の個別LINEにも連絡が来る。
“放課後、体育館に来い。”
侑「チッ……絶対あいつ告げ口したやん。」
あいつ……というのは先ほど校舎裏で見かけたマネージャー、Aのことだった。でも、宮侑自身が直接暴力をしたわけではない。なんなら、あいつがマネージャーを辞めて、あいつを殴った厄介なファンたちも処罰されれば一石二鳥やん、なんて考えていた。
放課後、体育館へ向かうと、自分の片割れに思いっきり殴られた。
治「お前、何しとんのや」
宮治は怒りに震えていた。Aが暴力を振るわれた事実と、自分の片割れが暴力を見逃した事実に。そして、自分の片割れが彼女に暴力を振るったかもしれないということ。
侑「何がや、俺自身は何もしてへんで」
侑は胸ぐらを掴まれた手を振りはたいた。
北「侑、Aが殴られてるところを見たのに止めなかったのは本当か?」
侑「……せや、面倒ごとには巻き込まれたくないからな。それに、俺が庇えば余計に怪しまれてAがいじめられるかもしれんじゃないですか。」
口から出任せである。そんなこと微塵も思ってない。ただちょっと痛い目にあって、部活を辞めてくれればいいと思っていた。
北「Aに直接手は出したんか?」
侑「俺は何もしてないです」
治「嘘や、Aはお前の名前を出して殴らないでって命乞いしてたで」
侑「は?んなの知らんわ」
治「知らんじゃすまされへんのやッ!!!お前いい加減にしぃッ!!」
銀島「治、落ち着きぃや」
アラン「せやで。でも侑、Aがどれだけ殴られたか知っとるか?」
説教タイムに顔を顰めていた侑は小さい頃から仲良くしてくれていた尾白アランの方を見る。
どれだけ、とは?と思っていると、それまでずっと黙っていた角名が口を開いた。
角名「これ、証拠になると思って撮ったんだけど。Aかなり殴る蹴るを繰り返されたみたいだよ。」
スマホを見ると、自分の想像より遥かにボロボロなAが地面に横たわっている写真だった。
こんなの、知らん。俺はちょっと殴られたら良いくらいにしか思ってなかったんに。
後悔しても遅いことに気づきつつも、ここまで酷いと彼女は許してくれないだろうし、彼女よりも先に自分が部活からいなくなる覚悟を侑はしたのだった。
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作者名:七瀬七海 | 作成日時:2024年3月6日 23時