もう2度と、バレーボールはやらないと【HQ】 (ページ11)

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桜が散るころ、俺は梟谷学園の門をくぐった。

梟谷学園は勉学もスポーツも有名な高校で、中でもバレーボール部はトップを争うレベルだった。

『志麻Aです。ポジションはWS希望です。』

1年でベンチ入りしたのは俺と、尾長というMBだけだった。

木兎「ヘイヘイヘーイ！！A！今日も負けねーぜ！」

赤葦「木兎さん、勝手にAに勝負しかけて勝手に勝って満足するのやめてください。」

練習は辛くないことはなかったし、レギュラーメンバーの人たちは、優しくて面白くて、尊敬していた。

だから部活動は好きだった。

でも、家に帰ると、バレーボールは嫌いだった。

「遅いぞ、A。」

『ごめんなさい、父さん。』

「ご飯食べたら、トレーニングだ。今日からトレーニングの量を増やすから、体重も落ちないように肉を食え。」

『……はい。』

父さんはプロのバレーボール選手だった。

過去形なのは、俺が中学生の時に引退……いや、バレーボール界を追放されたからだ。

オリンピックの代表選手に選ばれた父さんは、週刊誌にドーピング疑惑を持ちかけられ、真偽がはっきりとしないまま、代表選手を辞退した。

それは事実上、ドーピングを認めたも同然だった。

俺も、母さんも何度も聞いた。

嘘だよねって

でも、父さんは何も言わなかった。

そして俺にオリンピック選手になれと、言った。