私は貴方のヒロインになりたい 2

この世で一人 ページ35

『あなたはだれ？』


その言葉に喜びを感じるのはきっとオレ一人だろう

工藤新一の姿でAが居る工藤宅まで歩いた

この姿であっても玄関から入ることは不可能だ


(あの兄ちゃん、おっかねぇ匂いがするんだよなぁ)


以前、一瞬見かけた居候は胡散臭い、怪しい男で用心に越したことはないと少し高い塀を飛び越えて家の後ろに回り込んだ

丁度、二階のバルコニーを見上げたところでAはそこから顔を出してきた


『新一、くん？』


不思議そうに覗き込んでいたAは何故かバルコニーから飛び降りて来て驚いた


『あっぶねー...』


『ご、ごめ...何か急用なのかと思って』


『だからって飛び降りるこたぁねぇだろ...』


Aをキャッチしたもののカッコ悪くそのまま地面に倒れこんだ

突拍子もない事をするところは今も昔も変わらないようで


『新一くんどうして此処に？』


そのまま疑問を疑問で返すとAは更に不思議そうに首を傾げてじっとオレをみた


『新...』


何度も名探偵の名を言うからイラッと来てさ

すがるようにAを抱きしめた


『いたいよ...？新一、くん』


『オレは』


それでもAはその名前を呼ぶんだ


『あなたは......新一、くんじゃなかったりするの？』


『え...』





『あなたはだれ？』


ポーカーフェイス、その言葉を忘れちまうほど驚きその言葉に浮かれた


(情けねぇ)


やっと、みた

その歓喜してオレはマスクを剥ぎ取った


『怪盗さん？』


『時には、な』


オレの全てを出してでもAの記憶に残そう


『オレに盗めない物はない。例えそれが人の心でもな』


『ふふふ。怪盗さんのお名前は？』


『怪盗1412...観客は怪盗キッドって呼んでるぜ？』


二度とオレを忘れないように


『普段は黒羽快斗。くれぐれも宜しく頼むぜ？お嬢様』


Aの目にオレの名前と一緒に焼き付けば良い


『それがキミの姿？』


『おう』


『黒羽、快斗くん』


『おー』


ただ名前を呼ばれた事がこんなにも嬉しい


『連絡先、オレの名前で入れといてやるよ』


『いいの？』


『あたりめーだろ？前は入れてたんだ。気にすんな』


『...そっか』


この世で一人、その意味を理解してればいいんだ


(ミイラ取りがミイラ...ってな。情けねぇ話だが)



悪くねぇもんさ


『A、大きくなったらかいとくんのおよめさんなるーっ！』


ガキ臭い夢を見るのもAとがいいんだよ


.

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