私は貴方のヒロインになりたい 2

デートに誘うまでの話 ページ23

僕が僕らしくあろうとすると最近は考え事ばかりしている気がする

それもつまらない事だ

『安室透』が人格として一足先に行こうとする

誰より人らしく、感情的になる


『安室さん砂糖みたいだったから』


素直に真っ直ぐとそんな事を言われた事はあっただろうか

まさかそんな風に思われていたなんて


『喫茶、居るときの安室さんって隅に居るんですよ？私だから何時もカウンター席で』


確かに、目立たない様にはしていた


(知らなかった)


それが理由だったとは誰が思えようか


『安室さんの優しい笑ったのもコーヒー淹れる所もぜーんぶ、砂糖みたいに甘くてぽかぽか』


自分を奮い立たせる為のブラックコーヒーではなかった

いや、そうだったのかもしれないが彼女の中に自分が居た事に何より驚いた


『苦いブラックコーヒーに甘い砂糖が丁度いいんです』


あんな表情させるとは思わなかった


(結構な、殺し文句...じゃなかったか？)


後にも先にもそんな口説き文句をサラッと言う女性は居ないだろう

本当に輝く原石の様でその片鱗に触れた気さえする


(純粋ゆえか、天然か...)


それとも作為があるのか


(恐ろしいな)


どちらにしても彼女に掴まれる事になるわけだ

あの時、思わず手が伸びそうになった自分が居た

普段通りに優しい言葉を吐いて、この腕に引寄せまたそれこそ砂糖のように甘い言葉で心を癒すと言うのに彼女には出来なかったのが現実だ

感情的にするわけにはいかなかった

そこから積み上げて来たものが全部綻んでいく


「明日は...っと」


『安室透』は彼女に関わるべきではないのなかもしれない


「お、珍しい。最近、あっち行ったしな」


彼女に一喜一憂する事が果たして良いことなのか

行き過ぎると盲目的になってしまう可能性もある

危険が付いて回るのは定石で『安室透』は彼女の毒に侵されているのかもしれない


「丸１日何するかなぁ」


彼女のあの言葉を思い返すだけで嬉しいと思う自分が居る

やっぱり最近は考えすぎる


(一杯やるかな。肴も作るか)


そんな事でさえ楽しいと思ってしまう辺り重症だろうか

なんとなく生きているのだと心が躍る


(まぁ、なるようになるか)


考えるのは暫くやめようと思う


翌日、9:00を回った所で彼は目覚めた

何時もより少し寝過ごしたなと思いつつものっそりとベッドから体を起こした

一時間もすれば優雅にコーヒーを一杯を嗜み、１日を考える


(...散歩いくか)


何もない日が退屈だと気づいた

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