私は貴方のヒロインになりたい 2

朧、誓い ページ21

「あれ？コナンくん」


「A、姉ちゃん...？」


目覚めたAは元の記憶のないAに戻っていた

隣に座っていたおれを不思議そうに見下ろして来る


「ふふ、どうしたの？」


「え？」


控えめに笑顔を溢しながらポケットからハンカチを取り出した


「コナンくん、泣いてるよ？」


「これは...っ、Aが...」


「私？」


「A、姉ちゃんが泣いてたから」


Aは自分が泣いていることさえ気づかない

不思議そうに指で涙を拭って


「なんでだろうねぇ。変なの」


気の抜けた顔で笑った

本当に記憶が残っていないのだと認めざるえない


「コナンくんはやさしいんだね」


「...そんな事ないよ」


優しさが分かるのなら、きっとコイツを泣かせたりしないだろう

ましてや二度も同じ過ちをすることもねぇさ


「帰ろう？A姉ちゃん、皆待ってるから」


「本当？早く行かなきゃ！明日になったら佐藤刑事のお見舞いいけるかな？」


「頼んでみたら行けそうだけどね」


一人にすることもなかったと思う


「ねぇ、一つ聞いてもいい？」


「なぁに？」


「A姉ちゃんって怪盗キッドって知ってるの？」


「怪盗...?泥棒、さん？」


それより、大きな気掛かりが一つある

奴がAを知って、しかも顔も知りかも知れない可能性まで出て来た


「うーん。初めて聞いたと思うけどなぁ」


「ふーん」


奪う、とまで宣戦布告された


「A姉ちゃん、ぜったい一人にならないでね」


「うん？わかった」


奪われたくはない

例え、資格がなくてもカッコ悪くても

コイツだけは『今』奪われるわけにゃ行かねぇんだよ


「コナンくんが王子様だったら頼もしいね、きっと」


その資格を一度、放棄したおれにまだチャンスはあるのだろうか


「...大丈夫だよ、A姉ちゃんは僕が守るから」


落ち込む資格さえおれにはない

落ち込みよりショックの方が大きい

自分の不甲斐なさと愚かさに嗤えてくる


「ふふふ。ありがとう」


その癖にコイツの傍に居たいと思っちまう


『俺にチャンスをくれ』


『？』


『オメーが望むの答えを俺がやれる自信は正直ない』


前の記憶のAは大分、疲れていたからこの話は覚えてないだろうな


『それでも、待ってて...欲しいと思う』


これは、おれが背負うべき罪と罰だ


(つーか、キッドのどういう関係なんだよ。マジで)


でも少しだけ前に進んだ気がした


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