私は貴方のヒロインになりたい 2

最期の記憶 ページ20

あの日来た服を着て

あの日に出た時間で、同じ時間の電車に乗って

あの日と同じトロピカルランド入り口、時計灯下のベンチで彼を待つと決めてた

意気揚々と入り口へ向かう家族

恋人繋ぎをして向かう恋人達

天気以外は何一つ、変わらない


(来るかなぁ)


彼が来る保証は何処にもない

誰にも何も言っていない

言ってしまったら意味がなくなってしまうから


(てーるてるぼうず、てるぼうずー)


(あーしたてんきにしておくれー)


『偶然』がいいの

『偶然』見つけてほしい

だってそうでしょ？

偶然は運命みたいでキラキラで、ドキドキするじゃない

お伽噺のような心揺さぶられる燃えるような恋愛も好き

少女漫画のような『両片想い』も嫌いじゃない


(眠いなぁ...)


蘭ちゃんの次に見つけてくれないかな、なんて

贅沢だろうか

諦めの悪い女だって笑われるだろうか




『きっと私の物語はバッドエンドね』





(私も、ハッピーエンドがいい)


彼が来てくれるだけで変わるのだけれど


(女の子だもん)


やっぱり一言、言えばよかったかな？


(会いたいよ。新一くん)


私、また

すごく眠たいの

頭がちかちかして、痛いの


(まだ、消えていかないで)


シャボン玉が凍って割れて消えていくような音がするの

はらはらと堕ちていく欠片を掬おうと思っても留まってくれない

きっと次に目覚めるときは私は居ないんだと思う

時間もどれくらい残ってるのか分からない

陽も暮れて来た


『新一くん！好きっ』


なんで、消えてくの？


『んー、好きかなぁ。新一くん』


気持ちくらい残してくれてもいいのに


『A』


『ん？』


『蘭が帰りに俺ん家来るってよ。おめーもくるか？』

『行くっ！』


私の脳は赦してくれない



『もう貴方のヒロインになりたいなんて言わない』


『好きだなんて言わない』



私は最期に何を叫んだらいいの


それしかないのに


それしか知らないのに


私はまだやりたいことあるのに

言いたいこともあるに





『私は貴方のヒロインになりたかった』

(これで本当の幼馴染みになる)


「...新一、くん」


貴方を好きになって幸せでした


(ありがとーね)


掛けてくる君が見えた

夢でもいい

ほら、これで私の最期はハッピーエンド


(ふふ、またね)


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