【刀剣乱舞】旅立つ前に

お医者さんごっこ ページ28

「やえん」

暫く目覚めないと聞いていたもんだから驚いた


「おはようさん、お嬢」


寝間着のまま俺っちの所まで来たところを見ると鶴丸の旦那は部屋に居ないようだ


「つるいない…やえんとこきた」


「なんだ、今日も手伝ってくれるのか？」


「ん」


手招きすると覚束無い足取りで近寄ってくる

顔を洗い、着替えをさせ


「Aもおいしゃさん！！！」


歌仙の旦那が丈を合わせた白衣に腕を通させる

好奇心旺盛なのはいいことだな

部屋は悲惨だが静かよりはいいもんだ


「ごりごりごーりごり」


「大丈夫か？重たいだろう？」


「へいき！」


(この前は筋肉痛で夜泣きしたのはどこのお嬢ろうな？)


「Aもね、おいしゃさんするの！いたいいたいやっつけるの！」


「そうか」


こう言う賑やかなのが好きだな


「やえんがいたいときはAがおいしゃさんするからねっ」


「おーよろしく頼むぜ。お嬢」


「ひひっまかして！」


お嬢が居るだけで周りは華やぐ

この本丸は再起しようとして、それこそ誉れもんだろう

果たして罪深いのはどちらか

親より先に逝くお嬢と親同然の主を手にかけた俺っち達の罪


『薬研藤四郎だ。兄弟共々よろしく頼むぜ』


『とーしろー？とーしろいっぱい…』


『おう。藤四郎は皆、兄弟になる。一期一振吉光は長男っつた所か』


『いちおひとうり？』

『一兄のことさ』


『いちにぃ！しってるよ！じゃやえんはAのにぃちゃだねぇ』


幾つあればお嬢は浄土へ逝ける

汚れた付喪の魂で許されるなら喜んで捧げるというのに

考えすぎると顔がひきつっていけねぇ


「よぉーチビ助、起きたのか！」


「あー！かねしゃんきたぁ」


「ちゃんとジジィどもに顔みせたのかよ？」


「ずっと此処に居たからなぁ…まだ顔見せてないはずだ」


「？？」


「なら調度いい。薬研ちっとチビ助借りてくな」


突然現れた旦那にお嬢は俵のように脇に挟まれる

何でも首を長くして待っているんだとか


「やえんはいかないの？」


「俺っちは仕事がまだ残ってるしな…終わらせないと」


「チビ助にしか出来ねぇ仕事があるのさ！」


「Aのおしおと………？？？」


そう言われると、見送るしかねぇだろうよ


「お嬢が気が向いたらまた此処に来ていい。いつでも大歓迎だぜ」


皆、待ち焦がれていたんだからな


「旦那と仕事頑張ってこい」


「ん！やえんにぃちゃもがんばてねぇ」


「…おう」

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