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亀裂 ページ27

ある日を境にそれは起こった

鶴丸はとうとう来たかと彼女の前髪をかきあげるようにおでこを撫でる


「鶴丸さん」


「おお。小夜坊か…」


「Aは?」


朝になると愚図るAの手を引くのが小夜左文字の仕事だった

その日も変わらず彼は部屋に訪れた


「まだ寝てる」


「そう…起きる?」


「いずれは、な」


ピクリとも微動だにしない様子を目の当たりしても動揺することはない


「だが今日は起きないだろう」


そう、鶴丸が答えると小夜はくるりとかかとを返す

ああ参ったと落胆のため息を溢し鶴丸は重い腰を上げた


「行ってくる」


まるで死人のように眠るAに表情を歪めて彼もまた部屋を去った


(眠りが深くなってきている)


まるで鶴丸の心中を現したかのように床が軋んだ


「鶴丸、どうした」


「三日月」


「そんなに荒々しく歩いては廊下に穴が開くぞ」


前を遮るように現れた男は静かに微笑んでいた

ふと、見えた両眼はとても鋭く細めていて


「気付かないわけがないか」


三日月宗近はすべてを察した上でやって来たらしい

とんだ恐ろしい男だと鶴丸は苦笑を浮かべた


「なに、極自然の流れではないか」


死んだ魂が行き場を失くしたまま永遠に存在出来るはずはない

それが幼児なら尚更


「深く眠り始めたと言うことはもう、その日も近かろう」


例え霊力があろうととどまる器がなくては流れていくばかり

いずれ、底尽きるのだ


「皆分かっている」


「…Aは地獄行きだ。そう易々転生は出来ない」


「あぁ」


「俺の主はAだろう?」


鶴丸の考えが分からない三日月ではない

自虐的に嗤う彼になんと声をかけようか


「俺は止めたりなどしない」


言葉を探した


「だけどな。まぁなんだ…俺たちには時間がある」


もしも過去の自分に言うならば、と

過去へ思い馳せていく


「気長に待つのも一つの手だ」


時間は有限しかし神々にしてみれば時間は無限、やろうと思えば如何様にもできる


「焦るな。お前は俺たちのように転んではならん」


今思えば、柔軟性にかけていたなぁと三日月は痛感していた

人の心を持ち、人ならざる付喪神でありながら過信していたのだ

自らが人であるかのように錯覚を抱いたことが失敗だったと考えている


「足掻いても、なるようにしかならんしな」


「胆に銘じておく」


「あぁ、是非ともそうしてくれ」


気を緩めて口元を緩ませた二人はゆるりと広間へ足を進めた


.

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設定タグ:刀剣乱舞 , 幼女 , ほのぼの   
作品ジャンル:アニメ
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夢ぽてと(プロフ) - 清藤〇さん» コメントありがとうございます!亀更新ですが、頑張ります! (2019年11月3日 15時) (レス) id: dc72360ccd (このIDを非表示/違反報告)
清藤〇(プロフ) - 定期的に読み返すほど好きな作品です...久しぶりに更新されていて歓喜でした。体調にお気をつけてこれからも更新待ってます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 71409fbe97 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夢ぽてと | 作成日時:2018年11月8日 15時

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