新しい世界と部活と私【如月志雪】 ページ5
だから、中学生になったら必ず友達を作ろうと、如月は心に決めていた。
まぁ、結果的にクラスでは声の掛けにくい人物になっているのだが。まだ1学期が始まったばかりなのに、声の掛けにくい人物になっているのは、逆に尊敬しそうだ。
クラスでも友達ができないなら、部活でもできない、そう思っている方もいるかもしれない。しかし、クラスと部活では決定的な違いがあった。
そう、趣味だ。部活では、同じような趣味の人間が入ることが多い。趣味が合えば、友達になれる可能性がぐんと上がる。如月はそのことを「初対面の人と仲良くなれる方法30選」という本で学習してきた。
如月で考えてみよう。歌うことや読書を差し置いて、真っ先に思い浮かぶ趣味といえば、【ミュージカル鑑賞】だろう。
だが、クラスの人一人一人に「ミュージカルが好きか？」と訪ねるのは何か違うだろう。
だから、彼女は部活を得意ではなく、趣味で選んでいた。
彼女の趣味はさっき言った通り、ミュージカル鑑賞だ。そこまで変な趣味ではないが、一般的には少ない趣味だろう。どんな部活にすれば良いのだろうか。
「あ、あの、えっと、如月さん？」
「…あっ、ごめん……集中してた……」
集中していて、結橋の声が届いていなかったが、いつもより少し大きな結橋の声で、如月はやっと返事をした。
「ずっと顔をしかめていたけど、何かあったんですか？」
「……その……部活で…悩んでて……」
「そうですか……」
結橋も如月と同じように顔をしかめた。どうやら一緒に考えてくれているようだ。
やはり、気の利く人だ。
「あ、如月さんってミュージカル好きでしたよね。演劇部とかいいのではないでしょうか」
如月が部活を趣味で選んでいることを言わずとも、ちゃんと如月の気持ちを考えて結橋は選んでくれた。本当に頭が上がらない。にもかかわらず、如月はそんな気遣いに気がつかないで、「ありがと…今日仮入部に行ってみる……じゃあね」と簡単な言葉だけ残して、教室を足早に去ってしまった。
しかし、演劇部とはとても良い案だ。きっと、演劇部にはミュージカル好きの一人や二人はいるだろう。如月は一人、心を踊らせながら廊下を歩いていた。
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