新しい世界と部活と私【如月志雪】 ページ4
「あ、あれ、如月さん帰らないんですか？」
帰りのホームルームが終わって、生徒達が一斉に教室を出ていく中、如月志雪は一人顔をしかめていた。先生の手伝いをして、他の生徒より一足遅く教室を出ようとした結橋絵奈は、いつまで経っても教室を出ようとしない彼女を疑問に思い声を掛ける。
多分ほかの生徒も、如月がなかなか教室を出ないことを不審に思っていたと思うのだが、如月は少々、声の掛けにくい人物になっているため放置されているのだろう。
【声の掛けにくい】というのは、如月がなにか問題を起こしたわけでもなく、いじめられているわけでもない。彼女はただ、人よりも静かな生物なのだ。いや、静かというより、感情が分かりにくいから、人と話しずらいだけなのかもしれない。しかも、言葉足らずなので、あまり会話が通じない。そんな彼女はいつの間にか、クラスの話しかけにくい存在になっていた。
しかし一人例外がいた。結橋絵奈、人一倍優しく、誰にでも公平に接することのできる彼女は、クラスで少し浮いている如月を気にかけてくれている。
友達とまではいかなくとも、多少は如月を理解できている人物だと思う。
さて、さっきも言った通り、如月はとても無表情な少女である。その無表情が珍しく顔をしかめて、感情を顔に出しているのだ。何をそんなに悩んでいるのかというと、まぁ、誰もが悩んだであろう、部活選びだ。
そんなの、如月が得意であろう、【歌】を歌う、合唱部やコーラス部にすればいい話なのだが、如月は部活を【得意】で選んでいるわけではなかった。
部活で友達を作る。彼女が中学生になる時に、ひっそりと掲げた目標だ。
彼女は中学生になり、前にもまして友達を気にするようになった。
如月志雪にとって、友達作りとはとても奇妙な行動だった。
初対面でも躊躇わず、いや少し躊躇いながらも、クラス人に話しかけ、月日が経つと、「友達」や「親友」と言う言葉は一切発していなくとも、いつの間にか仲良くなっている、という当たり前の行動が、彼女にとっては不思議で不思議で仕方なかった。
彼女は小学生ながら硬い口調で話し、さらに無表情だったため、遠巻きに見られることが多かった。「友達作り」が不思議と言っているくらいだから、友達なんて出来なかったのだろう。
しかし、如月も友達を作った方が有利になることは分かっていた。グループ活動がたんと有利になるし、如月自信も、好きなものを語り合える仲がほしいはずだ。
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