36個目 side白雪 ページ38
「夜会に招待して頂いたと聞いています。なぜ来たとは」
「ーそうだ。礼をしようと思い呼んだのだ。クラリネスの城で君に…世話になったという気になった。何故かはよくわからん」
そこには私がタンバルンにいた頃とは違うラジ王子の1面が見えた気がした。
「そうなのです。ですからそんなに気なるのでしたら白雪どのを招いて何かお礼をされたらいかがかと私が申し上げたのです。それでもラジ王子は、う うむ…と煮え切らない返事ばかりなさるので、私共が気を利かせてみたというわけです」
「は はあ」
相変わらずこの人はすごい人だな…
「煮え切らんとは何だ!!私は考えているところだったのだ!」
ふとサカキさんの視点が私の後ろに向く。オビとAは今どんな顔をしているか分からないけどしばらく見つめあっている3人。そこにラジ王子が声をかけた。
「ーところで、その者達は初めて見るが」
「はい、クラリネスから共に参りました」
私が言った後にオビとAが挨拶をする。
「お初にお目にかかります王子。この度我が主ゼン殿下より白雪どのの道中護衛役兼付き人を任されております。オビと申します」
「お初にお目にかかります。同じくゼン殿下より道中護衛役兼付き人を任されております。Aと申します」
オビ、声の調子まで変えてる…Aも声の調子は変わってないが、少し笑顔を浮かべている。初めて見たAの笑顔だけど、誰が見ても分かるように目が笑っていない。作り笑顔かな…ラジ王子は騙せそうだけど。2人を横目で眺めていると、ラジ王子が紅茶で噎せてしまった。
「…白雪どの。ゼンどのは…今回の招致に何か言っておられたか、私に伝言など…」
「いえ特に」
「そ、そうか」
私の言葉を聞き明らかにほっとしているラジ王子。そんなにゼンが怖いのだろうか。
「そうです、ラジ王子。白雪どのの滞在中はできる限り一緒におられては?」
しばらく黙っていたサカキさんがいきなりそんな事を言うのでラジ王子はサカキさんを見て大きい声を出した。
「なっ!?な な な」
ラジ王子は大声を出した後慌てたように同じ言葉を言う。
その光景を見て、ラジ王子にそういう意図はなかったんだ…と他人事のように思ってしまった。
そして、やっぱりサカキさんはすごい人だと再認識した。
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作者名:あす | 作成日時:2018年12月1日 17時