MISSING TWINs Ⅲ (ページ13)

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ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅠ ページ13

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病室の私は１㎜も動いている訳なく、夜勤予定だったその看護師さんは家路へつく事になった。

ー芹さん、私達と居たのにねー

皆さんそう言って気にしないようにと口にした。
もし、本当に私だったと言うのなら、それはこの世界の私に他ならない。
何故気づかなかったのだろう。
私が体を離れたように、ここの私も体を離れている可能性を。
ｉｆの話が真実になるなら、それを確認しないといけない気がした。
“依存”＝“執着”で、＝“独占欲”に繋がっていく可能性は高いのに。

ーねー、お兄ちゃん…もう１人の“武藤芹”。…見なかった？ー

お兄ちゃんが時々病院から外へ出ている事は知っている。
行く先はお母さん達の所じゃないかと思っていた。
でも、もしもう１人の私を追いかけて行っていたのだとしたら？と考えたのだ。

ーここの芹の事？ー

ー…やっぱり…。お兄ちゃんは私に憑いて行ってたんだね？ー

ー大切な妹の幸せを見守るのが俺の心残りだからー

ー…昨日、私は何をしたの！？ー

風の無かった病室にぶわりと風が吹き荒れた。

ー芹、落ち着きな。病室が荒れるー

小さなお兄ちゃんは浮き上がって私の頬を撫で、優しく話しかけた。
私が落ち着くにつれて、風の勢いが弱まっていく。
私が起こしたのかと、恐ろしくなった。

ー芹、肉体を離れた魂はどのくらいの力を持つと思う？ー

ーなにそれー

ー考えて見たら分かるよ。芹は離れてすぐ、何かに触れる事ができた？今みたいに周りを動かすこと、できた？ー

いくら考えてみても、私は離れてすぐ別の世界のお兄ちゃんの体に入っていた。
だから、ここに来てからの事しか分からない。
それでも、何かに触れるにはとても気合いが要るし、周囲に影響を及ぼしたのは今が初めてだ。

ー何が言いたいの？お兄ちゃん…ー

ー離れたばかりの芹が、人に触れることなんてできないよ。俺もまだ芹に触れられないー

そういうものなのか…。

ーどんな事にも例外は有るもんだよー

納得しかけた私の背後から、結城のおじいちゃんの声がした。
おじいちゃんは苦い顔をしたまま、話を続けた。
おじいちゃんの話では強い感情を抱いた上に離れて時間が経っていない場合、又は周囲から強い影響を受けている場合、生者・死者を問わず影響を与えるとの事。
それをおじいちゃん達は“思いに呑まれる”と呼んでいるらしい。