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「ドラマに出てみないかな？」
誘いは８歳の時だった。
私は二つ返事で了承した。
大我くんの目に留まるかもしれない。
事務所の社長さんに見てもらえるかもしれない。
そしたら、オーディションに有利に働くかもしれない。
そんなif話が私の世界を回す核になっている。
ドラマは、傷ついた少年を取り巻く世界がゆっくり良い方向に向かい、最後には強く前を向いて歩けるようになるお話だった。
こんなの前の世界にはなかったな。
お蔵入りするのかな？と僅かな不安。
「これはね、大我くんの為に脚本家さんが書いてくれたドラマなんだよ。元々イメージはあったんだけれど、どうにもハマる子役が居なかったらしくてね。それで私が大我くんならどうだろうかと舞台の映像を渡したんだよ」
監督さんが私にそう優しい笑顔を向けた。
そうか、前の世界に“武藤大我”は居ない。
だから脚本家さんの本当に描きたかった世界はそのまま鳴りを潜めてしまったのか。
私が“芹”ではなく“大我”として存在することで、少なからず１人は喜んでくれたようだ。
「ご期待に添えるよう、全力で演じさせていただきます！」
にこりと笑えば、大きな掌が私の頭を撫で付けた。
「もう少し肩の力を抜いたら良いと思うよ。大我くんはまだ８歳だと言うのに、大人と話している錯覚をするよ」
「？？」
私は楽しんでいるよ？
大我くんに会う為に頑張ってるよ？
１つも無理をしていないのに、監督さんは何を言っているのだろうと首を傾けた。
「よしっ、クランクインだ。よろしく頼むよ。武藤“芹”くん」
「はいっ！よろしくお願いします！」
私は、消えてしまった私をこの世に存在させることにした。
劇団に入る時、本名を伏せ芸名に“芹”を充てた。
いつか、大我くんの声が私の名前を呼んでくれないだろうかと、願いを込めて。
、
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佐藤龍我のぶりぶりざ○もん
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作者名：Fin. | 作成日時：2019年3月28日 1時
