MISSING TWINs (ページ10)

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ix ページ10

「芹！こないだ借りた本少し難しかったんだけど！」

「えぇー」

膨れっ面で私に本を差し出す大我くんとは、同じ名前、同じ生年月日と言うことですぐに打ち解けた。
私自身はすごく胸を高鳴らせているんだけど、それを尾首も出さない術はとうに身に付けている。
自然体そのものの大我くんは私の前では他よりも豊かに表情を変えた。
幸せ。
幸せなのに。
私が私じゃない武藤大我というこの肉体のお陰で何一つ前には進めない。
大我くんが芹と呼ぶ。
それは私の名前だ。
だけど、その目に映るのは武藤大我という少年。
私じゃない。
ちぐはぐな世界にちょっとだけ苦しみを見つけた。

「今度の撮影芹と僕で撮るんだよね？対談楽しみだなー♪」

「大我の恥ずかしいエピソードいくらでも暴露してあげるな」

「はぁっ！？じゃあ僕は芹が事務所の玄関でお祈りしてたの暴露してやる！」

「うぇっ、そいつだけは黒歴史だから勘弁してー」

「フフフフフフ…」

「大我くぅーん！」

「芹キモッ！」

「失礼な！可愛いでしょう！」

「あははははっ！芹キモッ！」

「こんにゃろ！」

「坊っちゃんず、じゃれてねーで練習するぞー」

「はーい」

２人で同時に同じ声の高さで髙木くんに返答したことで、またからからと声をあげて笑った。