MISSING TWINs (ページ32)

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ⅩⅩⅩⅠ ページ32

「あ、これ大我似合いそ」

「ホントだ。でもお兄ちゃんも似合うよー」

「色違いで買おうかな…」

「芹にも買って？」

「芹には似合わないじゃん」

緩いフォルムのジャケットだけれど、男性物なだけあって、本来の私には似合わない。
武藤大我であればこそ出来る事と言うものがあり、それの１つがJr.になる事。
そして、大我くんと同じ物を身に着けていてもおかしく見られない事。
武藤芹が身に付けるには似合わない以外の言葉も出ない物でさえ、この体では手に取る事が出来る。

「じゃあ私と大我くんでこっそりお揃いしたい…」

「芹、それ自分がやられたら？」

「……………ヤメトキマス」

「そうしときなさい」

堪えきれず漏れた忍び笑いを見咎められ、仕方がないと大我くんが愛用しているブランドで、レッスン時によく着ている物と同じデザインのレディース物をプレゼントしてやれば、嬉しそうにはにかむ私がそこに居た。
あぁ、私もそんな顔してみたかったなぁ、なんてどうしようもない事を思う。
プレゼントしてくれるようなお兄ちゃんなんて居なかったんだから。

「お兄ちゃんありがとうー」

「どういたしまして」

「ふふっ、大我くんとお揃いー」

「はいはい。今度俺ともお揃い買う？」

「うん！お兄ちゃんともお揃いうれしー。あ、ジャージがいい！」

「よし、小豆ジャージな」

「お兄ちゃんそれ絶対着てないでしょ！？」

ポカポカ、まったく痛みの無い拳にじゃれあいの気配。
バレたか。と宣えば当たり前でしょー！と片頬を膨らませる。
あー、よくやってた覚えある。
自分で見る事になるとは思いもよらなかった。

「はいはい。ごめんって」

「私に小豆ジャージ…無いでしょ？」

「芹は何着ても可愛いよ」

「そんなので機嫌直らないからね…」

そんなの口だけなのは、自分だからよく分かってる。
自分である事を差し引いても分かりやすいとしか言えない表情の変化に、今の自分はどうなのかと少しだけ考えた。