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遠慮がちに引かれた袖と、
残された友人達の視線に優越感を感じながら
俺は裕翔について行く。
挨拶は済んだから大丈夫、一週間前にパネルができたんだ、と言うのを聞きながら
俺はそっと手を絡めた。

僅かに感じた指輪の冷たさにまた、
懐かしさを感じる。


「や、やぶくん…手……」

「嫌か?」

「…う、ううん……」


耳の裏まで赤くするのが愛おしい。
連れてこられた一角には、裕翔の身長を軽く超える程大きい写真のパネルが3つ並び、
拡大された作品の迫力をさらに増大させていた。

絡んだ手をそのままに、裕翔は作品の説明をする。

モノクロで撮った空と鳥。
何色なのかを想像させることで突き抜ける青が
より一層青になる。
その人の色になる。

そう言う裕翔の横顔とその空が重なって、
ドキリとした。
作品は言うほどにものを言う。
伊野尾がそんなことをいつか口にしていたことを
思い出す。


「…綺麗で……なんか」


寂しそうだな。

口にしかけた自分の言葉を飲み込んで、
「いいな」に変えた。
裕翔は穏やかに笑い返して「ありがとう」と。
やっぱり
寂しそうな声色だった。


「……」

「……」


連れて帰ってしまいたい。
さっきと同じことを反芻して、もう一度手のひらで
指輪の位置を探った。
無理をしてでも手に入れた裕翔の居場所。
みすみす逃して欲しくはない。

だからこそ、軽々しく口になんてできなかった。

でも、


「…なぁ、裕翔」

「なに?」

「部屋、取ってあるんだけどさ……どう、一晩?」

「…っ」


数時間なら、人目につかないところに
連れ去ったっていいだろ。


「そ、その部屋俺が取ったやつ」

「知ってる」


俺一応、真っ赤な君の恋人なんだし。

そんな言い訳を添えた口説き文句は、
ださい。と小声でサクッと反発を食らったものの
俺の引く手を離さず着いてきたなら
成功と言わずしてなんと言うだろう。

ついて行きたそうにしていた光を連れていかなくて本当に良かったと心の隅で思ったことは
裕翔にも秘密の話だ。


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恋桃(プロフ) - 大学生時代の2人のお話、ありがとうございました!この時からお互いに片想いしていたんですね…それから、現在のように幸せな新婚さんになったようで、とてもほっこりしました!これからもこのような短編の更新があったら嬉しいです、とだけお伝えしておきます笑 (2017年9月4日 11時) (レス) id: 76924eb30c (このIDを非表示/違反報告)
しの(プロフ) - 今更ながら読ませていただきました。本当に文章が綺麗で透き通ってて、なんだか二人の気持ちが胸に突き刺さるようで…なんだかもう幸せすぎて…最高でした…!! (2017年8月9日 1時) (携帯から) (レス) id: 2d66bc0919 (このIDを非表示/違反報告)
真聖(プロフ) - 完結おめでとうございます&お疲れ様でした。やぶゆと初めて読みましたが、どっぷりはまってしまいました。Subも光っててすごくよかったです。また、楽しみにしてますね (2017年7月14日 21時) (レス) id: 2105bdf65f (このIDを非表示/違反報告)
かな - 完結おめでとうございます。やぶゆと作品が少ない中、このような素敵な作品に出会えてとても嬉しく思います!何度も読み直してしまうほどでした(*´˘`*)これからも執筆頑張ってください!応援しています! (2017年7月8日 2時) (レス) id: 88f9ffd34b (このIDを非表示/違反報告)
恋桃(プロフ) - 移行お疲れ様です。過去編、ずっと楽しみにしていました。2人のはじまりを読むことが出来て、とても嬉しいです!これからも更新頑張ってくださいね!応援しています´ω`* (2017年7月2日 16時) (レス) id: 25883741b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しめじ | 作成日時:2017年7月2日 13時

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