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「…ここ……?」
指差し首を捻るように彼に見せたが、
それはそれは紳士的な笑顔で頷かれてしまい
招待状の威力を知った。
旅行にほとんど出掛けない俺にもわかる。
ここはスイートルームだ。
間違いない。
何十人入れるんだ、というでかさの客室。
ベッドは遥か彼方にキングサイズのものが横たわり、窓張りの大理石の夜景の…と理由を上げだしたらキリがない。
彼は会釈をして早々に出ていき、俺はひとりポカンと部屋を見回した。
「…裕翔の仕業か」
そう思うと少しだけ気が抜ける。
VIP待遇する客を間違えてないか、
と言っておかなければ。
荷物を適当なところへ置いてから、
俺は部屋を出た。
もうパーティーは始まっている筈だ。
久しぶりに会う裕翔のことを思うと、
やはり緊張してしまう。
電話で行くことを伝えようか迷ったが、
気を使わせても仕様がないと思い、
敢えて言わなかった。
それに、裕翔の驚いた顔が見たかった。
広間の観音開きの扉の前に立ち、深呼吸。
1歩踏み出せば、絵本で見たような光景が煌びやかに広がっていた。
俺には分からなかったが、きっとアート界での有名人なんかも居るに違いない。
探そうかと視線を見回してすぐだった。
「あ……」
シャンパングラスを片手に、それはまぁ絵になる恋人がにこやかに男たちと話していた。
同年代くらいだろうか。
どうやら友人達らしく、朗らかに笑っている裕翔を見つけた。
ただ、眉をひそめたのはその次のこと。
ひとり俺より少し年上くらいだろうか。
アジア人の男があからさまに裕翔の肩から背中、
腰にまで手を伸ばしそれはもうベタベタ、
といったように触り倒していたのだ。
今すぐ手を捻ってやろうかと思ったが、
裕翔の反応は冗談にしか思ってないのか笑顔のまま。
普通のこと、なのか……?
納得出来ずにヒリヒリした感覚がした時。
目が合った。
……今の顔、見られてないよな?
思わず恥ずかしくなって視線を逸らそうとすれば、
それはもう…なんていうか。
嬉しさいっぱい、といったふうに真っ赤な顔をするものだから一旦保留を即決で脳が決めた。
「ひ、さしぶり…やぶくん…」
「久しぶり、あー…元気だったか?」
「うん…元気」
久しぶりに見たはにかむような笑顔に、
今すぐ連れて帰ってしまいたい衝動に駆られるが
なんとか押し込める。
「来てくれてありがと…嬉しい」
「ああ…うん」
「あっ、あのね。ここ限定でパネル、大っきいの
作ってもらったから…来て」
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恋桃(プロフ) - 大学生時代の2人のお話、ありがとうございました!この時からお互いに片想いしていたんですね…それから、現在のように幸せな新婚さんになったようで、とてもほっこりしました!これからもこのような短編の更新があったら嬉しいです、とだけお伝えしておきます笑 (2017年9月4日 11時) (レス) id: 76924eb30c (このIDを非表示/違反報告)
しの(プロフ) - 今更ながら読ませていただきました。本当に文章が綺麗で透き通ってて、なんだか二人の気持ちが胸に突き刺さるようで…なんだかもう幸せすぎて…最高でした…!! (2017年8月9日 1時) (携帯から) (レス) id: 2d66bc0919 (このIDを非表示/違反報告)
真聖(プロフ) - 完結おめでとうございます&お疲れ様でした。やぶゆと初めて読みましたが、どっぷりはまってしまいました。Subも光っててすごくよかったです。また、楽しみにしてますね (2017年7月14日 21時) (レス) id: 2105bdf65f (このIDを非表示/違反報告)
かな - 完結おめでとうございます。やぶゆと作品が少ない中、このような素敵な作品に出会えてとても嬉しく思います!何度も読み直してしまうほどでした(*´˘`*)これからも執筆頑張ってください!応援しています! (2017年7月8日 2時) (レス) id: 88f9ffd34b (このIDを非表示/違反報告)
恋桃(プロフ) - 移行お疲れ様です。過去編、ずっと楽しみにしていました。2人のはじまりを読むことが出来て、とても嬉しいです!これからも更新頑張ってくださいね!応援しています´ω`* (2017年7月2日 16時) (レス) id: 25883741b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しめじ | 作成日時:2017年7月2日 13時