深澤とは名乗らない！-10-

撮られたくない ページ11

(9章掲載の「撮られたがり」続編)




＿＿＿…




へべれけ、とまではいかないが程よくアルコールが回ったこの親子。結局行きつけのラーメン屋であーだこーだ話をして、こんな時間に。

タクシーに乗り、やっと自宅に辿り着くと出迎えた辰哉の妻、稜哉の母親に少し驚かれた。





A「おか、えり…え、どういう状況？笑」


「…玉雪でラーメン食って、話し込んでた。」


A「…稜哉が辰哉と？？笑
何をそんな話し込むことがあったの笑」


辰哉「男同士のナイショの話、笑」


「変な言い方やめろ。」




お酒の力もあってなのか、普段よりは距離が近いように見える二人に、Aは微笑ましく思えた。


Aから水を受け取って飲み干した辰哉は、「今日はシャワーだけね」と言われ、仕方なくといった様子で風呂場に向かう。

酔いが覚めかけている稜哉は、テーブルの上に置かれている容器からみかんを手にとって食べ始めた。




A「食べてきたんじゃないの？笑」

「水分補給だよ笑」




コップを洗い終わったAが、そろそろ寝ようかという雰囲気になった時、咄嗟に稜哉から先ほどの話題が飛び出した。




「母さんさ、もし親父と出かけた時とかに写真撮られたらさ…嫌なの？」


A「……ん？笑」


「いや、さっきその話なって。
一回も撮られたことないじゃん？よっぽど母さんが気にしてるからなんだろうけど、やっぱり嫌なのかなって。」




聞いてきた息子に、Aは少し黙り込んでいたが、一瞬で察したらしい。




A「"俺は撮られたいのに！" …って？笑」


「え…いや、…うん、そう笑
知ってた？笑」


A「なんとなく分かるよ笑
どうせもう奥さんになったんだから、撮られてもおかしくないじゃん？的な謎理論あるんでしょ笑」


「…ドンピシャ笑」


A「分かってないなぁ〜深澤サンはー笑」







何が悲しくて、辰哉と出かけてる時にしか見せない私の顔を
誰かに撮られないといけないの笑






辰哉が入浴を済ませてリビングに来た頃には、Aはすでに寝室へ行っていて、「A寝た？」と呑気に聞く父親に、稜哉は改めて釘を刺した。





「マジで母さん悲しませるなよ。」


辰哉「え、それは当たり前だけどどうした？笑」


「ありゃ絶対写真なんて撮られないわ。」


辰哉「待って言ったの？！え、Aなんて…？」


「自分で聞いたら。風呂行ってくる。」





辰哉の願望は、到底叶いそうにないらしい。





Fin

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