こもれび (ページ10)

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ひんけつページ10

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注射を入れるところをトントン叩いて合図してから細い血管に針を刺す。

「よし、とれたよ。楽にしてねー。」

ふーと息を吐く姿は何回見ても少し切ない。

痛いのなんて慣れないよね。

「結果と薬出すから明後日以降で次いつ来れるか予定見て待ってて。おつかれ。」

ガーゼが貼られていない方の手を小さく振って帰っていく翔ちゃんに俺も笑顔で振り返す。

カルテに打ち込まれた文字に危うくため息を漏らしそうになる。

『食欲不振
目眩朝起きた時の倦怠感』

貧血の見本みたいな症状が沢山出てるんだよな。

数値が酷い時に鉄剤一回入れたら合わなくていっぱい吐いちゃって。

何回か薬は変えての今の薬。
効用が著しいわけではないけど副作用は一番まし。

大野さんも鉄分を気にして食べされてくれてるんだろうけど、どうも良くならない。

翔ちゃんは今の体に慣れたとか笑うけど、医者としては全く笑えない。

うーん。問診からして今回の数値も良くはなさそう。

しかも１ヶ月後には俺が楽しみにしてる翔ちゃんの単行本の発売日がある。

高校生の時に相葉さんと軽く決めた『飛田さくら』
のペンネームを『本名知ってる人に知られたくない無理』って未だに恥ずかしがってるけど、名の知れた作家になっちゃってさ。

厳しいな。

今の時期だけでも栄養あるもの食べさせるように大野さんに連絡しておこうか。