＊羊の舞12@おおきなひとくち ページ24
おおきなひとくちの羊の舞というお話が容量いっぱいで最後までアップできていなかったみたいです。まあ、翔さんがミステリアスな設定なのであのままでもいっか、と思っていたのですが一応の結末をつけるべく一話だけ。
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「見たでしょ？ケンカ。」
もうどこを見ているかわからない大野さんは悲しそうに言葉を発した。
「昨日は予約の日で、俺がホテルまで迎えに行ったの。2人で話しながら少し歩いてそのままお金の話になった時、翔がキョドった。怪しく思って問い詰めると、お金をもらえなかったって。
言いにいこう、って来た道を戻ろうとした時にその人焦った翔が『今までだってお金くれなかった人いっぱいいるもん！』って言うの。」
方法は間違ってるのかもしれないけど自分の働きに適うお金を対価として受け取り、管理していくことを経験させたかった大野さんは翔さんのお金に手出しも口出しさえもしないようにしてきたと言う。
「翔は俺の気持ちをわかってくれてなかった。
いっそ、俺の意図はエゴでも良かった。
ただ、愛されるべき存在としての価値を見出してくれていなかったことがショックで。翔と一回距離を置きたいってなったのがあの時。
で、キミに盗られちゃったってことだ。笑」
最後に無理に笑った大野さんはおどけて「こんなことなら縛り付けとけばよかったー！」とあっけらかんと言って立ち上がった。
お釣りが有り余る程の金額をテーブルに置いて背を向けた大野さんに咄嗟に口が滑る。
「翔さんだって大野さんの愛を感じていたはずです！
あ、それに。俺の服、返すって言ってたから、俺また翔さんに会えるから、そんときに説得して大野さんのと返しますから、」
「んふ。返すって、何手に入れた気になっちゃってんの。」
「いや、これは言葉の綾ですよ。」
どうかな、って笑う顔はまだ切なくて。
「でもね、俺、翔にはもう会えない気がするんだよね。なんだろうね。名義上元恋人の勘かな。」
その夜帰ると俺の部屋のドアの前に白い紙袋がひとつ｡その中には俺が翔さんに貸した服と、どこかのホテルのメモ用紙。
『クリーニングして畳んでもらいました。俺の服は捨てといてください。智くんによろしく。』
もらった名刺を見返して大野さんの下の名前に気づいた時にはもう記載されてた電話番号をスマホに打ち込んでいた。
ーfin
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作者名：すす | 作成日時：2020年11月15日 18時
