はつばい ページ23
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そのまま寝かせといていいよと言われて昼過ぎまでぐっすり眠った翔くんは久しぶりに安心した笑顔を見せてくれた。
車も大丈夫そうだったから家を通り越して書店に向かうことに。
朝より全然しっかりした足取りの翔くんと自動ドアをくぐって一番最初に目に入る場所。
そこに『飛田さくら』の字があった。
大きなポップで彩られたその中で、凛と立ってるその本にさっき緩んだせいか俺が泣いてしまいそうになる｡
あの絵にしたんだ。
焦げ茶色の双葉が白い世界で明るく芽吹く姿がとても翔くんらしかった。
もちろん一冊手に取ってレジ向かおうとすると翔くん恥ずかしがって携帯を差し出す。
『家にあるのに』
外だから俺もその携帯に『いいの 俺が買いたいから』と打って返してレジに向かう。
入口で待ってるという翔くんの方をちらっと見ると、
その目の前で一人の女性がその本を手に取って俺の3つ後ろに並んだ。
嬉しいね。
嬉しいね、翔くん。
もう俺泣いてるんじゃないかってぐらい感動してるんだよ。
感情が繋がってる翔くんは俺が手を引く頃には涙目になっていて、それに気づかないフリをして早く早くと車に乗せた。
帰って早速活字を読み込む俺に翔くんは苦笑する。
リズミカルなストーリー展開と温かい題材に加えて、躍動感溢れる多彩で新鮮な『音』の表現が評価されてる翔くんの作品は読みやすく、普段本を読まない俺みたいな層からの支持も厚い。それが俺の自慢だったりする。
もともと熱中しやすい俺はこれを一気に読み切ってしまいたくて、それをわかってる翔くんがはにかみながら待っててくれる。
互いの作品がどストライクな俺と翔くんはどんなに心を痛めることや苦しみに襲われても、結局はこの上ない幸せの日々をゆっくり過ごしていく自信があった。
−fin
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作者名：すす | 作成日時：2020年11月15日 18時
