■85. ページ42
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俺の目の前にいる真子は、俺の知らない真子だった。
俺の後ろに隠れていた弱虫だったあいつの姿はなく、凛と母親の目をしていた。
「……あの人に最後まで私のサイドエフェクトのこと言えなかった……いや彼なら知ってたかも」
「結局言わなかったんだな」
「うん……さてとそろそろ帰ろうかな」
「Aー！帰るよー！」と少し遠くにいる娘に大きな声をかける。あまりにも早すぎる帰り支度に思わず引き留める。
「お、おい！」
「……じゃあね。正くん久しぶりに会えてよかった」
「お母さん！みて、季節外れのどんぐり！」と手のひらに乗せて真子に自慢する娘を優しい目で見つめ、「ホントだ凄いわね」と頭を撫でながら褒める。その姿を見ると真子は母親になったんだと実感させられる。
我が子の手を引いて歩き出す真子と名前を呼び引き止める。
「……お前のことずっと好きだった」
「…………知ってた」
そう言って微笑んだ真子の横顔を今でも忘れられない。
歩き出すその背中をただずっと眺めていた。
ただ自分だけが取り残されていくようで、少し寂しい気分になった。
昔からあいつの隣は俺だったのに、空閑に一目惚れし、付き合った真子。空閑との子供を身篭ったのに足枷になるのは嫌だと空閑に別れを告げ、1人で子供を育てたのだろう。久しぶりに会った幼なじみは強い母親になっていた。
また会えるきっとまた…、
その時は勇気をだしてプロポーズでもしてやろうなんて思っていた。
しかし、それは叶わず、6年後の大規模侵攻で川瀬真子が死んだのを知った。
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