■60. ページ16
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私の前に置かれている遊真くんが入れてくれたお茶を飲んでみる。一生懸命入れてくれたのだろう味は少し薄かったけど、遊真くんの気持ちが入ってて美味しかった。『美味しい』と言うと「本当か！？」と嬉しそうに遊真くんは聞いてきた。可愛い。
「……A、少しいいか」
お茶を飲んでいたら宙に浮いているレプリカが私の方へ寄ってきて話しかけてきた。どうやら私に言いたいことか聞きたいことがあるらしい。
『どうしたの？』
「…いきなり聞くのだが、君の母親の名前はなんという」
『お母さん？…………私の母の名前は"川瀬真子"だよ』
私が返答をすると少し黙ったレプリカが「そうか」と呟いた。急に母親のことを聞かれ、少し眉をひそめ顔を歪める。私の顔なんか見えていないかのようにレプリカは話を続ける。
「父親の名前はなんという」
『……知らない』
「父親の名前は分からないのか？」
『名前も知らないし会ったこともない』
家族の話をされて思わず顔が暗くなると流石にレプリカは「すまない。無神経に聞いてしまった」と言った。遊真くんは何も言わずじっと私を見ていた。
「おれは母親も父親も知らないぞ」
『え……』
「でもいいんだ。
『……』
「だからぜんぜん寂しくないぞ、Aにはおれがいる。だからそんな暗い顔をするな」
5歳くらいの男の子がこんなふうに思っているなんて、思わず自分が恥ずかしくなった。私は寂しくないと言ったら嘘になるけど、それでもそばに居てくれる人はいる。私は思わず陽太郎くんを抱きしめた。
「うお！急にどうした！？」
『……陽太郎くんは強いね』
「まーな！おれは玉狛支部の隊員だからな！！！」
私の言葉に反応し、拳を突き上げてドヤ顔しながら言った。そんな陽太郎くんをクスッと笑った。
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