探偵社の窓から突っ込んだら色々疑われてます

第八話 ページ9

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私はこの世界に生まれ落ち、そして拾われた。
文字通り、生まれ落ちたのだ。まるで神が落としてしまった異物の様に

そんな私はポートマフィアでも無く探偵社でもなく組合でもないある人に拾われ、育てられてきた


黒に馴染め、闇こそが我だ。


闇は全てを覆い隠す。全てを孕み、全てを飲み込む
それこそ悪食の様に真実も嘘も人ですらも
そんな闇こそが我だと囁かれ続け、生きてきた

乱歩さんは判らないけれどまだ直に会っていないから勝機はある。太宰さんと云えどマフィアを抜けたのだから、マフィア時代よりも少しは情報網が縮まっているはず

「黒に馴染め、闇こそが我……」

足を止める事なく少しダボついた裾を上げ、ギブスの様なホルスターが現れる。パチッ、と釦の様なものを外すとダラリとナイフの形をした部分だけがぶら下がる

音も無く一本それを抜き取り、ちょうど右斜め上へと投げた


「ぐぁっ」


潰れた蛙の様な声。
善かった、太宰さんや探偵社の方には行っていない。行ったとて返り討ちだろうが、無駄な手間はかけさせたくない

ぶら下がるナイフを元に戻し、釦をつけ直す。
シュルリと裾を元に戻し、何事もなかったかのように路地裏を進み、少女は外の世界へと足を踏み出した


路地裏の奥の奥で、小さな池の様に侵食していく血溜まりとピクリとも動かない手には眼もくれなかった。

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