零と序章 ページ1
「だ、だから、その……」
真夜中の港に響く船の汽笛。
古くなった街灯の中には既に寿命を迎えるものも。そのせいで此処いらは特に帷が落ちている気がする。強いて私たちを照らしているものがあるとすれば、月の光くらいだろう。雲があるせいで青白い光は時折姿を見せる程度だが。
「……もっかい言ってごらん?」
「ひ、っ…だ、だか、っらぁ…!」
「何ビクビクしてんの、言葉も喋れないくらい馬鹿になったワケぇ?」
港の大きな倉庫。新しい正式な港は少し離れたところに出来たせいで、こちらはすっかり使われなくなったらしい。だが当時の処理がうまく行き届かず残った貨物や木箱は『私たち』の身を隠すのにはうってつけだ。まぁ身を隠すことなんて、相手が余程馬鹿な時くらいだろう。相手の力を見誤る愚かな相手という者もこのご時世居るようで。
「なんで顔赤くしてんのかなぁ。
こっちが怒ってんのに盛られて困るんだけど」
「ひっ…ぅ…」
「耳にキスされただけでキてんの?
可愛いねぇ、あんた」
皆が引き上げた中で取り残された私と先輩。散乱した木箱の隙間でしゃがみ込む私の肩口を肌けさせて噛み付く先輩。腰を抱かれて決して逃げられぬようにと、色気もへったくれもない言い方をするなら、犬のマーキングのように痕を残す。これで4カ所目になるのか。
446人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サクラ(プロフ) - 面白いです!続き楽しみにしてます!! (2020年4月13日 11時) (レス) id: 95161687a4 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ - 凄く面白かったです!これからも応援しています!更新頑張ってください! (2017年12月25日 1時) (レス) id: 96aa2f1931 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かきのたね | 作成日時:2017年11月19日 22時