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「この鳥めっちゃこっち見てくんじゃん」
「パンが美味しいの知ってるんですね」
「な?」
小さなパンの欠片を隆二さんが地面に置くと、鳥がそれを啄みに来た。
「人に慣れてる……可愛い」
“ね?”と隆二さんと微笑みを交わし、私は朝食を完食。
少しずつ上昇していく気温の中、隆二さんと私はダイニングスペースのソファでくつろぎながら、観光用の地図を広げた。
「こっちにもビーチあるんだぁ」
「本当だ」
「ここは森の中って感じ?」
地理の勉強をしてるみたいに二人で地図を眺めているうちに、
私の目が、一点に止まる。
「ライステラス……棚田?」
日本で棚田を見たことがあるけれど、夕陽に反射する水田が果てしなく連なり、とてもきれいだった。
南国の棚田は、一体どんな感じなのか……。
「何か飲む?」
「あ、はい」
「頼んでくる」
「私が電話しますよ!」
「良いよ良いよー。勉強してなさいよそこで」
「じゃあ……お任せします。ありがとう」
1度浮かせた腰をソファに戻し、私はまた地図に視線を落とす。
ホテルのあるジンバランからライステラスのあるウブドまでを指で辿っていると
「A、行こ」
隆二さんが寝室のある建物から私に呼び掛けた。
「行くって……どこに?」
「そこ。ライステラスあるとこ」
「えっ?」
「行ってみたいんでしょ?フロントに聞いたら二時間かかんないくらいだって。車チャーターしてもらった」
私は確かに“ライステラス”と口にしたし、行ってみたいと思ってる。
でも、“行きたい”とは言葉にしてないのに………どうして隆二さんは分かっちゃうんだろ。
「Aの目、ずーっと地図の左端見てんだもん」
「あ……」
隆二さんは、やっぱり私のことは何でもお見通しなんだ。
そう思うと、口角が勝手に上がってくる。
「良いの?隆二さんゆっくりしなくて」
「良い。どうせだったら色々見て回るのも良いじゃん」
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────チャーターしてもらった車に乗ってウブドに着いたのはまだ午前中。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年2月5日 20時