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「……隆二さん、やっぱり無理です私」
指先が、木枯らしの中の落ち葉のように小さく震えていた。
「帰りたいです……」
「……此処まで来られたのに?」
「今日は、此処まで。また今度、」
「それ、いつなの」
すがるような私の瞳を、挑むような隆二さんの瞳が見つめてる。
「……怖いから、帰りたい」
「どこに」
────どこに。
「A、此処に帰ってきたかったんじゃないの」
「隆二さん、いつも優しいのに今日は違うね。私、怖いって言ってるのに……何で……」
息をする度に持ち上がる私の肩に、隆二さんの両手がそっと添えられた。
「Aがどんだけ取り乱しても泣いても俺が傍に居る。その為に一緒に来たんでしょ」
私はきっと今、気の強そうな目をして涙をいっぱい溜めてる。
隆二さんがさせたくないと言った表情。
「もう充分、自分のこと責めてきたでしょ。手紙から……読んでみたら?」
隆二さんの肩の向こうには、揺れるブランコの後ろに立って、子供の背中を一定のリズムで押し続けるお父さんとお母さんの姿────。
私は深呼吸して、バッグに入れてきた封筒の中から、色紙を取り出した。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年2月5日 20時