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吹き上げる風から守るように、隆二さんが私をそっと抱き締めた。
「傷付いたら、傷付いたって言わなきゃだめなんだよ。嫌なことも、怖いことも、大丈夫なふりしてたらだめなんだって」
言い聞かせるような語り口に、ギュッと喉が絞まるような感覚がする。
「本当は、あんなこと言われて嫌だったんじゃないの」
私の頬を両手で包み隆二さんが「ん？」と問い掛けた。
「私……」
「うん」
「あの子が……死ぬほど嫌いです」
「……だと思ってた」
隆二さんが笑って、私の目から涙が溢れて、
でも何だか可笑しくて、私も笑ってしまう。
「すごく酷いこと言う人だなって。私だけじゃなくて、隆二さんにも。すごく……嫌だった」
そう、私は凄く嫌だった。
「……でも、死ぬほど嫌いって言ってる私も酷いですよね」
「そう？俺しか聞いてないし言いんじゃね？」
隆二さんは“これ高かったんだよねー”と言っていたコートの袖で、私の涙を拭った。
「Aの暴言なんか可愛いもんでしょ」
────自分は、恐れや不安を飛び越えられるんじゃないかと思わせてくれる人が居る。
どんな自分でも受け入れてくれる、安心をくれる人が居る。
たった、一人。
「隆二さん」
「ん？」
「……一緒に、行ってくれますか」
でも、一人じゃ飛べないの。
「生まれたとこ、一緒に……行ってくれますか」
あなたのその背中の羽で、
私を連れてってくれますか。
.
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────玄関の万年カレンダーが“2月1日”になったその日。
「隆二さーん、見てくださいよ！この可愛い赤ちゃん！」
真由が可愛い女の子を産んだ。
「手とかちっちゃーい……可愛いなぁ、もう」
今朝LINEで届いた写真を飽きもせず眺めている私を、隆二さんは面白そうな顔をして見てる。
「子供、好きなんだ？」
「うん」
「俺も」
「隆二さん子供居るとすぐ手ぇ振るもんね。で、怪訝な顔されちゃう」
“怖いお兄さんが何の用？”みたいな顔されちゃう。
「いや、もう喋れる歳の子には慕われるよ、俺」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2019年2月5日 20時
