飛べる、飛べる。 ページ39
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椅子をひっくり返す勢いで立ち上がって隆二さんを追いかけようとした私を、純奈が呼び止めた。
「A、コート！」
投げられたコートを掴み、私は外まで隆二さんを追い掛けた。
「隆二さん！」
立ち止まった隆二さんが、羽みたいに浮き上がって見える肩甲骨を動かし、ゆっくりと振り返る。
「ごめんね隆二さん……ごめんね」
「何でAが謝んの」
「隆二さん、みんなの前であんなこと言う人じゃないのに……私が言わせた」
「違う。Aが言わせたんじゃない」
「私、ああいうの言われ慣れてるんです。今度、もしまた同じようなこと言われても庇わなくて大丈夫だよ？私、平気です」
北風が吹く歩道で、隆二さんは大きく息を吸い込み私にぶつかりそうな距離まで近付いた。
「私のせいで隆二さんが他の人に何か言われるの……嫌だな。隆二さん優しいから……だから本当は、あんなこと言うの嫌だったでしょ？ごめんね……」
「A」
「はい……」
.
「本当に守りたいものの為なら、俺は自分のことなんてどうでも良いわ」
.
私は隆二さんの目を見つめながら、唇をぐっと噛み締めた。
その瞳が優しすぎて、堪えてる涙が、溢れそうだったから。
「そんな気の強そうな目して、涙いっぱい溜めて……こんな風に我慢するやり方、俺はAに身につけてほしくない」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2019年2月5日 20時
