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何故、彼女たちは私が“同情”される側の人間だと知っているのか。
今まで私が雑誌の取材で答えた内容を読んで分かったのか、誰かから聞いたのか……。
「隆二くん、優しいからね。ほっとけなかったんじゃない。可哀想な子だから」
胃の中に、カッと熱い物が落ちてきた。
怒りじゃなくて
嫌悪感────。
「純奈ちゃん、久しぶり」
そのとき、何とも言えないタイミングで隆二さんが私たちのテーブルに来た。
「御無沙汰してます、今市さん」
にこやかに挨拶した純奈と少し会話をしたあと、隆二さんが私の顔を覗き込んだ。
「……どうした？」
「え？」
「顔」
「顔？なに？ブス？」
眉と口角を出来るだけ上げた私とは反対に、隆二さんの眉と口角が下がる。
「何かあった？」
「何もないよ？」
作り笑いを浮かべた私の目の前で、純奈が斜め後ろを指差した。
「Aが同情で今市さんの気を引いたってあの子たちが言いました。可哀想な子だからって」
「純奈！」
思わず隆二さんを見上げると、彼の体はもう、斜め後ろのテーブルへと動き出していた。
「だめ、隆二さん！」
咄嗟に掴んだ隆二さんの腕は、するりと私の手から抜け、引き留めた反動で私の体も座ったまま斜め後ろを向く。
「なんなの」
隆二さんが、彼女たちに、そう訊ねた。
「こいつがお前らに何したんだよ」
声を荒らげてるわけでもないのに、隆二さんの言葉は強くて、私は彼のそんな厳しい声を聞いたことがなくて────
「一生懸命生きてきた人間に、お前らがそんなこと言える権利あんの？Aが可哀想？そういうこと言うそっちが悪いだけなんじゃないの？」
瞼が熱くなってうつ向いた私の手を、純奈の手が握り締めた。
「本人がさ、どうにも出来なかったことをそういう風に言うのは……」
隆二さんはそこまで言って、眉間に深いシワを寄せ、
「卑怯だろ……」
そう呟いた。
それは、見たこともないくらい
怒りに満ちていて、悲しそうな表情。
「なになに？」とざわつき始めたお店を、
「A、帰ろ」
隆二さんは出口に向かって歩き出した。
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2019年2月5日 20時
