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ホテルまでは車で20分程。
窓から見えるのは、東南アジア特有の濃い緑の景色と、驚くほどのバイクの量。
3人乗りをしている人も居て、思わず目が釘付けになる。
寺院を訪れる際の服装の注意などを聞いている間に、車はホテルの入り口へ。
「セキュリティチェックあるじゃん」
「本当だ」
金属探知機と、賢そうなワンちゃんに匂いを嗅がれるというセキュリティを抜けたあと、車はロビーへ横付けされた────。
「うわぁ……」
夕暮れの風が吹き抜ける開放感あるロビーはとにかく広々していて、 海を挟んだ対岸の空港の明かりが遠くに夜景のように見える。
「隆二さん……何か感動する」
「まだロビー。ロビーだから」
笑う隆二さんの言う通り、まだ旅の入り口。
だけど、ロビーでウェルカムドリンクを飲んだだけで、私のワクワク感は一気に高まっていく。
ジンジャー風味のドリンクをストローで吸い上げながら、チェックインの手続きをしている隆二さんのことをじーっと見つめる私。
隆二さんはスタッフの人の説明を“あー”とか“はい”とか“なるほど”と相槌を打ちながら聞いていて、
旅慣れている人の雰囲気がそこらじゅうから出ている。
「よし、行くか」
ドリンクを一口だけ飲んだ隆二さんは、ヴィラの鍵を握り締め席を立った。
辺りを見回しても、日本人らしき人は見当たらない。
ごく自然に私の手を握った隆二さんと、細い通路を歩いていくと
石造りの門に観音開きの扉が現れた。
「お、ここだ」
鍵を開け扉を開くと、そこに広がっていたのは部屋じゃなくて“庭”。
「「おぉ!」」
タイルが敷かれた砂利道を挟んで、右手に部屋、左には屋根だけのダイニングスペース。
奥にはプールがあって、更にその奥に海が見える。
1棟1棟独立しているヴィラの想像以上の広さと景色、そして雰囲気の良さに私の唇は開きっぱなし。
「取り敢えず部屋入ろ」
「は、はい」
部屋の中に入り、私は開いた唇の間から「ふぁー……」とため息を漏らした。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年2月5日 20時