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「A、付き合った彼氏のことで泣かされたりないじゃん」
「それは……たまたまだよ。私がどうとかじゃなくて、相手の人の人間が出来てたんだと思う。隆二さんもね」
「その“たまたま”を、人は運命と呼びます」
「運命論は否定しちゃうタイプなんだけどなぁ、私」
人生の一切は、あらかじめ決定されていて、人の力ではどうすることもできないという考え方を運命論という。
でも、それが本当なら、自分がどんなに強く思っても、世界を変えられないことになってしまう。
「そういう難しいことじゃなくてーもうちょっと甘い感じの“運命”」
「甘い運命かぁ……。じゃあ真由はくまさんと出会う運命だったんだ？」
「じゃない？」
すぐに“じゃない？”と答えた真由に微笑み、私は手荷物に必要な物を詰めた。
「ねぇねぇ、向こうで何するの？観光？」
「ううん。ただゆっくりしようかなって。隆二さん年末大変だったしね」
「そっかぁ……そうだね」
「うん。あ、ほら！年明けちゃう！カウントダウンしたら家まで送ってくからね！」
「はいはーい」
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────そして。
2017年、1月2日。
午前10時に成田を出発した飛行機は、同日午後6時前にバリのデンパサール空港へと到着した。
「「着いたーー！！」」
ロビーへ出ると、隆二さんは「んあーー！」と手足を目一杯広げて大きく伸びをする。
「よく寝たー！って感じ？」
「まじで爆睡だった」
笑顔でそう答えた隆二さんは、離陸してすぐに目を閉じ本当によく寝ていた。
「A、機内で仕事してたでしょ」
「隆二さんが良い座席にしてくれたからWi-Fi繋がっちゃって」
「疲れてない？」
「全然！お陰で全部片付いちゃった」
私と隆二さんはスーツケースを転がしながら、目を合わせて微笑んだ。
「ここに迎えが……あ！あの人かな」
空港の出口には日本人のスタッフさんが居て私たちは挨拶と握手を交わし、迎えの車に乗り込んだ。
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2019年2月5日 20時
