No.1510。10 (ページ15)

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「キューってするの？隆二さんが？」

「そう」

「………可愛い、それ」

口を覆って笑う私に、隆二さんは指先でお湯をかけた。

「茶化すなよー！」

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バスルームを出たあと、私たちはビーチへと足を伸ばした。

どこまでも続く白い砂浜。

砂遊びをやっている家族や、カヤック、ボディーボードを楽しんでいる人も居る。

サンセットが一望できるビーチのカップル用のベッドソファに案内された私たちは、何をするでもなくぼんやりと海を眺めた。

足を崩して座っている私と、その隣で遠目から見たら寝仏に見えるんじゃないかという体勢で肘をついて横になっている隆二さん。

15分に1回くらい、サービスでホテルのスタッフさんが飲み物や軽食を“いかが？”と持ってきてくれる。

ベッドソファで座ったままの食事は、日本なら“お行儀が悪い”と言われるかもしれないけれど、ここはバリ。

私はノンアルコールのカクテル、隆二さんはビールを飲みながら、カナッペや魚介のサテをつまんだ。

「……私、蚊に刺されたかも」

「え？どこ」

「足……1月に蚊に刺されるのも貴重な体験ですね」

「そうだね」

笑いながらサテを口に運んだ隆二さんは、咀嚼しながらビーチの遠くに視線を送る。

咀嚼するスピードが段々ゆっくりになって、遠くを見たままサテの串を指先でクルクル回しはじめた。

「……ビーチに何かあるの？」

私が隆二さんの方に顔を近づけると、彼は串で宙をつつく仕草をした。

「あの人……」

「ん？」

串が指す方を見ると、日本人男性が一人立っている。

「Aのこと見てんだよなぁ……」

「え？」

「昨日のレストランでも見てたんだよ……じとーって」

隆二さんは目を細め、軽く舌打ちした。

「気のせいじゃないですか？それか……隆二さんのこと見てたとか。テレビの人だーって」

「だったら俺と目が合うでしょ。違うんだよなぁ……」