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然り気無く男性の方を見ると、確かに私と目が合った。
「Aのことタイプなんじゃね？」
「あの人が？まさか。同じ日本人だから見てるだけじゃない？ほら、奥さんらしき人と来てるし」
「……いや、見てる。じとーって。あれやらしいこと考えてる」
「考えてないって！」
私が笑うと、隆二さんは串を少し噛んで苦笑いを浮かべた。
「見んなよなぁ……俺のなんだけどー」
────“俺の”
全身がくすぐったくなるような言葉。
隆二さんはあまりそういう事を言わなさそうに見えて、
意外と口にする人。
「なぁ、部屋戻ろ。何かやだ俺」
「えぇ！？本当に？私この席でこうしてるの好きなのに！」
「俺とどっちが好きなんだよー」
「それは隆二さんですけど……って言うかソファに勝って嬉しいですか！？」
「嬉しい。だからビール飲んじゃう」
残りのビールを飲み干した隆二さんは、食器を端に寄せ手をパンパンっとはたいた。
「行くよ」
「は、はい」
散歩がてらヴィラまで歩きながら私は隆二さんの方を見上げる。
「隆二さんって……ちょっとヤキモチ妬き？」
「俺？」
「うん」
「だいぶヤキモチ妬きだよ、最近」
悪戯に笑って見せて、隆二さんは私の腰を抱いた。
「ちらっと振り返るくらいなら分かるけどさぁ、あんなジロジロ見なくたって良いじゃん。辞めてほしいわ、本当」
「そっかぁ」
抱かれたまま彼の体によりかかり、私は下を向いて隠れるように微笑んだ。
────胸がキューっとしたから。
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2019年2月5日 20時
