検索窓
今日:7 hit、昨日:3 hit、合計:352,240 hit

飛び立つ気持ち。 ページ1






自宅のテレビで流れているのは、大晦日の歌番組。









キラキラしたアイドルがステージ狭しと動き回っているのを観ながら、私はスーツケースと格闘していた。









────真由の愚痴を聞きながら。









「年末年始も仕事ってどういうこと?本社ってそんな忙しいわけ?」









「取引先が動いてたらこっちも休めないじゃん。仕方ないよ。くそー、これ入んないなぁ」









「大晦日だよ?大晦日に妊婦ほったらかす?」









「ほったらかしてない!仕事!くまさんだって真由とゆっくりしたかったに決まってるじゃん。あれ?パスポートどこやった?」









「もう!もうもう!聞いてよ私の話!」









「聞いてるじゃん!」









「聞いてない!気持ちはもうバリ行ってる!」









「行ってないって!カリカリすると赤ちゃんに良くないよ?ほら、そのたんぽぽコーヒー飲んで」









「……あんま好きじゃないこれ」









「えぇ……真由が来るって言うから帰りに買ってきたのに」









大晦日の夕方まで仕事に追われていた私は、今ようやく旅支度に取り掛かっている。









「それで?今市くんはどこかな?」









「そこだよ!テレビの中!」









「ふふ。聞いてみただけ」









「そうですか」









「引っ越しのときビックリしたー!Aの彼氏が芸能人とかさ!しかもテレビで観るより数倍かっこいいんだもん!」









真由が東京に引っ越してきた日、旦那さんのくまさんは仕事で“男手がいるだろう”と、隆二さんも手伝ってくれた。









真由に隆二さんを紹介して良いのか、凄く迷った。









真由が周りに言う心配じゃなくて、彼女に余計な気を使わせたらどうしようと思ったから。









でも、真由の性格のお陰か隆二さんの性格のお陰か、二人は和気藹々と部屋を片付けていて、私は凄くホッとした。









それと同時に嬉しかった。









幼なじみに、隆二さんを紹介できたこと。









隆二さんに、幸せな幼なじみを紹介できたこと。









「何かさ、Aはそういう星回りなんだよね」









「んー?」









「すごーく愛してくれる人に巡り会う星回り」









「それは真由もでしょ」









スーツケースに鍵をかけ、私はポンッとそれを叩いた。

2→



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (105 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
734人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年2月5日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。