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何かを食べさせてあげたり、唇に指が触れたり……付き合っていれば当然なことにいちいち心が揺れて……困る。

「これ何の味？」

「アセロラ……」

「ふーん」

自転車のチェーンが回るチリチリという音と、二人の唇の間から漏れるタブレットを転がす音。

口の中は甘酸っぱくて、手のひらには好きな人のたくましい腕。

「ちょっと寒いな」

「うん」

隆二さんの向こう側にはガラス張りのショーウィンドウが続いていて、そこに私たちが写りこんでいた。

私たち……似合ってるのかな。

釣り合ってるのかな。

「……私を好きになった理由って何ですか」

甘酸っぱさに誘われて、私の舌からそんな質問が転がり落ちた。

「え？」

「隆二さんさっき言ってたから。好きになった理由は違うって」

「あ、それね。理由はー」

「うん」

「ホテルで話したじゃん。あ、最初のときね」

「うん」

「そのときに、声のトーンとか話し方が凄く落ち着くなぁと思って。けど、笑顔が泣いてるみたいに見えて、どんな風に生きてきたらこういう笑顔になるのかなぁって考えたりして……気分悪くした？」

「ううん！」

「良かった。それで、そのうちに楽しいときは凄く良い笑顔だなって気が付いて。そしたら何か、この子もっと笑わせたいなぁと思ってる自分が居るわけですよ」

「はい」

隆二さんと私は顔を見合わせて笑って、家へと続く角を曲がった。

「仕事一生懸命してさ……ずっと、小さい頃から色んなこと頑張ってきたんだなぁって。何か……Aの傍に居たいなと思って」

「うん……」

「……これ、説明になってる？」

隆二さんが眉を寄せて、私は思わず吹き出した。

「うん、伝わりました。それに、隆二さん本当に私の傍に居てくれたし……色んな場面で」

隆二さんは微笑みながら小さく頷いて、その足を止めた。

「家、着いちゃったね」

「あっ……」

私は隆二さんの腕を支えにしながら、自転車からおりた。

そのままデッキに運ぼうとした自転車を、隆二さんは軽々と担ぐ。