No.1510。 (ページ10)

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「体調は良い！凄く良い！寝不足なだけ！」

「そう？なら良かった」

私と純奈は廊下の先にあるリビングを抜け、その奥に繋がっている広いダイニングキッチンへと入った。

壁に面してL字型にシンクとコンロが配置されているキッチンで手を洗いながら、純奈が私の方に顔だけを向ける。

「で？どうした？何か私に話しあった？」

「ある。昨日のこと」

「昨日って……あ！私と健太郎が話し込んじゃったこと！？ごめんね、私が無理矢理連れてったのに！何かね、健太郎が、」

「ううん。それは全然良いの」

ここには作業台とダイニングテーブルとを兼用できる大きな台がある。

バースツールに腰をかけて、私は台に頬杖をついた。

「純奈と健太郎くんのことじゃなくてね」

「じゃあ何？」

純奈は手を拭きながら私の隣に腰を下ろし「何？何？」と楽しそうに首を左右に振っている。

「昨日、先に帰ったじゃん私」

「うんうん」

「ホテルまで帰るタクシーが中々捕まらなくて」

「うんうん」

「そしたらね“俺と一緒に乗っていきませんか”って声かけられたの」

「誰に」

「誰だと思う？」

「んーとね……博多の酔っぱらい」

「半分正解」

「えぇ？誰よ？私の知ってる人？」

「知ってる人……」

「誰……？」

私は軽く唇を舐めて、彼の名前を口にした。

────「今市隆二」

「………え？」

「隆二さん。今市隆二さん」

「……え？右の人？右の人がAに声かけたの！？」

「うん……」

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昨日の夜、隆二さんは“びびったー！全然知らない人に声かけたかと思った！”と笑ったあと、私の後ろをピッと指差した。

「あそこに停まってるタクシーです」