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街路樹の枯れた枝が、とげとげしく寒い空をつき剌すような夜道。









私はコートのポケットからミントタブレットを取り出した。









2年前に禁煙をしてからコレが手放せない。









蓋をスライドさせて、カシャカシャとケースを振る。









いつも思うのだけど、どうしてタブレットのケースはこんなに中身が取り出しにくいんだろ。









振っても出なかったり、出てもいっぱいだったり。









「ん……」









左手でカシャカシャとケースを振っていると、隆二さんが「ねぇ、それ」と指をさしてきた。









「はい、あっ、食べますか?ちょっと待って下さいね。これ全然出なくて……」









「そうじゃなくて」









「え?」









隆二さんの手が









「こっち」









私の右手を上からそっと握った。









「左利き?こういうケースって右手じゃないと出しにくいんだよ」









隆二さんは私の手を握ったまま、まるで手解きをするようにタブレットのケースを右手に持ち変えさせて、それを軽く振った。









「ほら、出たじゃん」









私の左の手ひらには、タブレットが一粒。









握られた右手は、ほんのり温かくなって、トクトクと脈を打ってる。









いきなり手を握られて悲鳴をあげてる私の胸の音をかき消すみたいに、隆二さんが「あっ」と声を上げた。









「タクシー停まってるじゃん!あれ乗るわ。今日、ありがとね」









「い、いえ……」









「またね」









ドアを開けたタクシーに走っていきながら、隆二さんが私に“バイバイ”と手を振る。









私はタブレットを握り締めたグーのまま、隆二さんに手を振り返した。









彼のその背中に、聞きたいことがある。









.









.









.









────隆二さんは、彼女いますか?









.









.









でも、聞けなかった。









聞いたら、隆二さんは背中の羽を広げて飛んで行ってしまいそうで









聞けなかった。









.









.









.









.









12月24日


これは恋です、と私の右手が言ってました。

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年7月24日 22時

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