No.1510。 (ページ4)

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学生時代から住んでいた家の居心地も悪くなかったけど、目に止まったその物件はアメリカのランチスタイルな外観で、玄関横には大きなデッキがあった。

切り妻屋根に煙突がついた１階建て2LDK。

アメリカでは“One storey house”と言うが、日本ではこれを“平屋”と言う。

“ここだ！”と思ったものの、ネックになったのは家賃。

16万円という家賃は入社したばかりの私には無理な金額だった。

諦めがつかない私は、会社のロッカールームにある掲示板に“ルームメイト募集(家賃折半)”の紙を貼りつけた。

その紙を見て手を挙げたのが純奈。

当時部署が違った彼女と顔を会わせたのは、そのときが２回目。

新人研修以来のことだった。

純奈がルームメイトの募集に応募したのは、同棲していたひとつ上の彼氏の健太郎くんが転勤で東京を離れることになったから。

純奈もまた、彼氏と二人で住んでいた部屋の家賃に悩み、良い家はないかと探していた最中だった。

同期でルームメイト……それだけの関係だったはずの私たちだけど、

今ではこうしてライヴに行ったりする仲。

どちらかが恋に泣くときは添い寝もするし、仕事で煮詰まったときは朝まで一緒に飲む。

彼女は同期でルームメイトで、

そして、かけがえのない友人────。

「純奈、今日は健太郎くんの部屋泊まるんでしょ？」

「そうなんだけど、健太郎何時に帰ってくるか分かんないんだってー……Aとホテル泊まろうかな」

「ダメだよー！たまにしか会えないんだから！」

イベンターをしている健太郎くんの転勤先は、ここ福岡。

酔うと“イベンターに転勤なんてあるわけない、俺は飛ばされたんだ”が口癖の健太郎くんだけど、飛ばされたわけじゃないと私は思う。

出世を見込まれた人材は、必ず１度は地方でしごかれるものだ。

「って言うかー、って言うかーAさぁわざわざ福岡のライヴ誘ったでしょ？」

「ん？」

「健太郎と私を会わせるためにわざわざ福岡に誘った。それも健太郎が関わってるライヴに。違う？」