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「けどさぁ、右の人も真面目だよねー。ライヴでアドレナリンがドバドバ出たあとにお酒も入って女性と密室だよ?ムラッと来るじゃん普通」
「私にはムラッと来なかったみたい」
私が笑いながら答えると、純奈は「そんなことない」と瓶を横に振った。
「私が右の人ならドア閉めた瞬間押し倒してるね」
「何それ、想像したらドキドキする」
二人が手にしている瓶の中で、ライムが笑い声に合わせて揺れている。
「まぁ、真面目だからか彼女居るからか分からないけど、手を出さなかった右の人は信頼に値するねー。今度いつ会うの?」
「……え?」
「盛り上がって朝まで話したんでしょ?次の約束は?」
「ないよ?」
「なんで?」
「なんでって言われても……連絡先とかも知らないし」
「………」
「………」
「……コロナ返しなさいよ」
純奈は私の手から瓶を引き抜いた。
「ちょっと!」
「連絡先知らない!?教え合わなかったの!?まじで“一夜”じゃん!幻じゃん!」
「ま、幻じゃないよ!この目でちゃんと見たもん!」
「じゃあ、ほぼ幻。朝どうやってバイバイしたの!?さよーならーって!?」
「ううん、5時くらいかな?隆二さん話してる途中で寝ちゃって。私も支度して空港行かなきゃだったから自分の部屋戻った。あ、ちゃんとお布団かけてあげたよ」
「バーカ」
「バーカ!?」
「普通さぁ、番号とか教えるでしょー……」
「そう……なのかな。普通が分かんなくて」
「あ……そっか。これを一般男性に当て嵌めちゃダメか」
「うん……でも、私ね、1回番号書いたの、紙に」
「え?」
ホテルの部屋の一人掛けソファに体をうずめるようにして眠ってしまった隆二さんの顔を、私は暫く眺めていた。
綺麗な寝顔だった。
今まで見てきた男の人の寝顔の中で、一番綺麗な寝顔。
額にかかる前髪がスッと通った鼻筋を強調してるみたいで、とてもよく出来た絵みたいに見えた。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年7月24日 22時