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夕方、まだ太陽が沈む気配を見せない時間に、私は隆二さんが住むマンションに着いた。
腕に、丸めた模造紙を抱いて。
「何か緊張するな……」
“ふぅ”と細く長く息を吐いて、私は預かっていた鍵で彼の部屋の玄関を開けた。
「お邪魔します」
隆二さんは居るんだろうか?とリビングのドアを開けた瞬間、
私は模造紙を落としそうになった。
「なにこれ……」
リビングに白と淡い水色、ピンクの花がふんだんに飾られた花器が、至るところに置かれていたからだ。
何かのパーティーか披露宴の会場みたいで、あまりの可愛さに私の顔は自然と綻ぶ。
「可愛い……」
カウンターの大きな花瓶には鮮やかな花がたっぷりと盛られ、茎の新しい切り口の匂いがまだ漂っている。
フローリングには、アジサイやトルコキキョウがデコレーションケーキのように丸く華やかに飾られて、午後の日射しを照り返していた。
こんなことを言うと隆二さんにまた“変なもん吸った?”と言われそうだけど、
花で出来た雲の上を歩いてるみたい。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月23日 18時