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隆二さんが私に優しく微笑んで、私も微笑み返した。
「……良い曲、本当に」
「ありがとう」
「……ねぇ、隆二さん。1ヶ月記念のディナーどうしよ?1ヶ月どころか3ヶ月記念になっちゃいそうな感じですけど……」
「そうねぇ……来週は?夜なら時間取れるよ俺」
「本当!?じゃあその日!」
「オッケー」
隆二さんが、返事と共に鍵盤から指を離した。
「……もう1回聴きたいな」
「もう1回?」
「うん」
「良いよ」
「……隆二さん、タイトルは?この曲のタイトル」
「それは……そのうち分かる」
「またそれ?」
「またそれ」
「そっかぁ……」
「………なぁ、臣たちが観に行ったサッカー、キックオフ何時?」
「さぁ……でも代表戦って7時半とかじゃないですか?」
「……7時半?今6時だよね?俺、帰るときあそこのお寿司屋さんで二人見たんだよなぁ。笑いながら飯食ってた」
「見間違いじゃないですか!?だって私、事務所で二人のこと見送ったの4時頃ですよ!」
「……ドッペルゲンガー」
「二人同時に?すごい、それ」
片眉を上げて小首を傾げた隆二さんの肩に頭を乗せ、
私はまた、彼の音色に聴き入った。
「終わったらまた弾いてね」
「はいはい」
それは爽やかで、ちょっと甘くて、ちょっと切なくて、
夕暮れにぴったりな旋律だった。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月23日 18時