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「で?何で?」
「あの…………音に色がついて見えるんです」
「ん。なんて?」
「音にー!色がー!」
「聞こえてるから!」
この話、ゆかりにしかしたことなかった。
「変に思わないで下さいね。こういう人、結構居るみたいで」
「あ…………共感覚?」
「本当の………本当のって言い方も変なんですけど、共感覚を持ってる人の中には人物に色が見える人も居るみたいで。私は音と数字に色が見えるだけなんです」
「例えば?」
「んと………例えば隆二さんの誕生月の9は、私には濃くて深い青に見えます」
「へぇー」
「だから、私にはライブが音じゃなくて色の洪水で………気持ち悪いですか?」
「全然。すげぇーって思ってる。だから目瞑るんだねぇ」
「はい。だから三代目のライブ行っても楽しめないと思ってて………セットとか映像とか」
「目瞑っちゃうんだもんね?」
「うん」
私たちは、声を出して笑った。
「DVDだとそんなことないし、普通にお喋りしてるときは大丈夫なんですけどね…………何でだろ?やっぱ変なのかも」
「人と違うだけで変じゃないよ」
本当にそう思ってるのかな…………ちょっと不安になった。
「あー!でも理由聞けてすっきりした!」
そう言って伸びをした隆二さんを見て、私は唇を噛んだ。
「これが、聞きたかったんですもんね………」
「そう。俺、別にからかってやろうとか遊んでやろうとか思ってたわけじゃないからね。ただ何でだろー?って気になってただけ」
これで、終わりだと思った。
「それだけだから。もう………うん」
隆二さんが私と連絡を取る理由がなくなった。
意地をはらないで、怖がらないで、もっと早くに彼を好きだと認めれば良かった。
あの外階段のあるお店でこの話をして、隆二さんはすっきりして、
私は2月のうちに彼を忘れることができたかもしれない。
こんなに長く長く彼のことを想ってしまう前に、忘れることができたはず。
「歩いてきた?」
「あ、はい…………大丈夫です。一人で帰れます」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月4日 20時