Indelible. ページ22
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春が来て、夏が去り、秋が来た。
本当にあれから彼とは会ってない。
夏に一度、“久しぶり”とLINEが来て私は返信しようかとても悩んだ。
悩みすぎて一週間ずっと彼が夢に出てきて更に悩んだ。
このまま頼りない繋がりを切った方が良いのかどうか………。
結局、既読を付けずにスルーした。
だから私のトーク画面には3ヶ月近く“1”が表示されたまま。
「じゃーん!あの汚い居酒屋の半額券!」
秀香が自慢気に汚い居酒屋の半額券を見せてきた。
汚いけど美味しくて、お店のおじさんは私たちの悩みに耳を傾けてくれる。
東京のお父さん的存在。
「半額券!?そんなの発行してたらあの店潰れちゃうよ!」
「うちらお得意様だからくれたんだよ〜」
「えー、良いのかな?今日行こうか」
「良いのかな?とか言いながらすぐ行こうとしてんじゃん」
私たちは控え目にクスクス笑ったつもりだったのに、デビルイヤーの主任にはバッチリ聞こえてたらしく、睨まれた。
「席替え必要か?そこの二人」
…………嫌味だなぁ。
ネチネチ、ネチネチ…………ネチ男って呼んでやろうか!?
就職活動中の面接の時から、この主任とは折り合いが悪い。
「何故、大学院に進まなかったんですか?──大学は8割の学生が院に進みますよね?」
この質問に「早く現場を知りたかったから」と私は答えた。
本当にそうだったからだ。
うちには院まで進む経済的な余裕がなかった。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月4日 20時