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家に帰ったら玄関ポストに紙が挟まっていた。
「んー?」
“次期自治会班長について”
「無理です………」
一軒家に住んでいるとこういうことが、ちょくちょくある。
春は自治会費みたいなのを集金に来るし、夏は法被を着た子供たちが寄付のお願いに来る。
私が独り暮らしだなんて、誰も思ってないのかも。
「さむーい」
玄関を開けて、取り敢えず紙を靴箱の上に置いてからリビングの電気をつけた。
無駄に16畳もあるリビングはエアコンなんかじゃ暖まらない。
石油ファンヒーターのスイッチを入れて、コートを脱いで電気ケトルでお湯を沸かす。
“GOOD JOB”とプリントされたマグカップにコーヒーの粉を入れて砂糖を入れて
ヒーターが点火した音を背中で聞きながら、さぁ夜ご飯は何にしようかなと考えていたら
ピー、ピー、と給油しろの音が響いた。
「今!つけた!ばっかり!だろ!」
一人地団駄を踏んで、給油タンクを引き抜いて寒い寒い玄関の上がり框に腰を下ろした。
赤いポリタンクから、シュコシュコで灯油を移していく。
「寒い…………」
ドッポン、ドッポンと音を立てながらタンクに入っていく灯油を見ながら
このシュコシュコはほんとは何て名前だろ?と思った。
寧ろ、シュコシュコは我が家限定な呼び名だったりするのかな?
くだらない事を考えてたら、携帯の着信音がリビングから聞こえた。
急いで立ち上がってテーブルの上の携帯に手を伸ばす。
こんな時間にかかってくるのは、きっと仕事場からだと思ったから。
───でも、画面を見て心臓がドキッとした。
“隆二さん”
LINEじゃなくて、普通の着信で
何だかそれが、無性に嬉しかった。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月4日 20時