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“乗りません”の意味をこめて首を横に振った。
声が出なかった。
運転手さんは、私に会釈して前を向いてハンドルを握る。
早く、ドアを閉めてくれませんか。
「ねぇ」
彼が私を見上げる。
「ちょっと………」
そう言って手招きした。
「もうちょっと……」
その手に吸い寄せられるように、私は彼に近付いていく。
「もうちょっとだけ……」
最後の一声のあと、彼は私のカーディガンをギュッと掴んで引っ張り寄せて
.
.
.
キスをした。
数秒だけ唇を重ねたあと、数ミリだけその唇を離して
「こういう男だからね」
と小さな小さな声で私に言った。
11文字を話す間、何度か私の唇と彼の唇が触れあった。
キスは終わってたはずなのに、話せば唇がぶつかるほどの距離。
そんな距離で、そんなことを言われて呆然とする私を置いて
空車を賃走に変えたタクシーが走り去っていく。
「仕事、楽しいし順調だから恋愛とかはあんまり……」
そう彼が言ったのは、先週。
ならば、今のキスは何なのでしょう。
ただ“そんなんじゃないからね”と伝えたかったのでしょうか。
だけど、私の中の空気が前より膨らんだのは確かです。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年10月2日 19時